信州において、かつて山肉食(ジビエ)はかなり一般的でした。
諏訪大社に「鹿食之免」があったり、大正・昭和初期あたりから山肉を扱う店が連綿と続いていたりしています。
「信州ジビエ」
として、信州の自然豊かな恵みによるおもてなしが始まるのは、その歴史に比べれば比較的最近です。
しかし、全国的にも注目されている取組になっています。
今回、この信州ジビエの普及に御尽力いただいている、
オーベルジュ・エスポワール の 藤木シェフ
に、その立ち上げからの経緯等について”「信州ジビエ」の始まり”として寄稿していただきました。
2回に分けての掲載です。
今回は第1回目です。
◆冬のおもてなし料理「信州ジビエ」
皆さんは信州の味覚というと何を思い浮かべるでしょうか。
春は山菜、夏は新鮮な野菜、秋にはきのこや果物、冬は…?
海のない長野県は冬に目玉となる味覚に乏しいと思われてきましたが、実際、冬の信州を訪れる目的となるようなものを各地とも提案できていませんでした。
エスポワールでは寒さに耐えて甘味を増したキャベツや古来の保存食・凍み大根、晩秋に摘んだ完熟トマトなどに加え、地元で獲れたジビエ(狩猟肉)を提供してきました。
実は、冬の信州でしか食べられない、宝とも言うべき食材がたくさんあるのです。
2004年11月、長野県諏訪地方事務所が開催したのが「地元のおもてなしふーどを味わう会」。
飲食・宿泊・観光などに関係する方々を中心に、地元食材を用いた料理を、長野県原産地呼称管理委員会認定酒などと共に味わい、この季節の料理の供し方・楽しみ方などを学ぶもので、食材や日本酒・ワインの作り手の方々も参加して、盛況に行われました。
これは、冬場に自分の店で提供している料理を地元の飲食・宿泊業に携わる人々に食してもらい、冬のおもてなしの参考にしてもらおうというのが狙いでした。
中でも参加者からの質問が多く、関心が高かったのがジビエ。
冬場に狩猟で得た動物を食べる文化は世界各国にあり、中でもフランス料理での歴史は長く、ジビエは最も古典的な料理としてレシピが確立されています。
火の入れ方によって美味しくも不味くもなってしまうジビエは、扱いが難しい食材でもあり、従来日本で親しまれてきた鍋や焼肉のような食べ方は、猪肉には向きますが、鹿肉では硬く臭くなってしまうためご法度です。
しかし、実際は鹿肉にも鍋や焼肉といった調理が用いられてきた結果、
「鹿肉は臭くて硬くてまずい」
という印象が定着してしまいました。
実際は、鹿肉もやさしく丁寧に加熱すれば、本当に美味しい食材です。
「地元のおもてなしふーどを味わう会」では、鹿肉と山鳩を提供しましたが、調理によってジビエは遠方からも足を運びたくなる魅惑的な料理となるのです。
何より、冬限定の味覚と言うのが最大の魅力です。
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