長野市篠ノ井有旅で両親と「陶源郷 有旅陶芸教室」を運営している丸山奈留美さん(同市篠ノ井)は、米国人の夫と協力して3歳の長女の育児に奮闘する傍ら、自身の教室運営に加え、出張形式の陶芸教室を開催するなど、精力的に毎日を過ごしています。現在は育児にエネルギーの大半を注いでいますが、長女が小学生に上がる頃を目途に、丸山さんを惹きつけて離さない陶芸の創作活動に再び、傾注しようと考えています。
「初めてなのにすごく上手に焼けている。ここに鉛筆で印をつけて。」

【教室の生徒に語り掛ける丸山さん(写真右)】
平日の午後、陶芸教室内には焼き物を学ぶ幅広い年代の生徒が集まり、丸山さん及び丸山さんの両親の指導を受けながら、それぞれのペースで制作に当たります。それぞれの生徒の思いを受け止め、丸山さんは的確に制作指導をします。
ある女性の生徒は、「対等の視線で接し、話してくれる。陶芸の技術もあるし、人柄も含めてすごい先生。」と評価します。
丸山さんは、乳幼児を育てる母親サークルや老人介護施設等にも招かれて、老若男女に陶芸を教え、「毎日、いろいろな人に会って話をしながら作る過程が楽しい。」と語ります。
丸山さんは、いずれも公務員をしていた両親に育てられ、高校を卒業するまで長野市内で過ごしました。高校時代、演劇部に在籍したことがきっかけとなり、服飾品をデザインする仕事を目指して上京し、専門学校を経て舞台衣装の製作会社で数年間、勤務するなど、会社組織の中で働いていました。
最初の就職先では、一時期、映画界の話題をさらった社交ダンスの映画「Shall We ダンス?」に登場する舞台衣装のデザインを手がけるなど、世間の注目を集める案件にも関わっていましたが、仕事の夢と現実の狭間で思い悩んでいました。
舞台衣装は華やかな世界ですが、一瞬のきらめきで輝きが強い分、作品としての一生は、とてもはかないものです。また、パーツ、パーツの分業ではなく、最初から最後まで自分の手の中で制作をしたいという思いも日々募ってきました。
「今、考えれば、若手が全体を統括することができるわけがないと思うけれど、若かったころは高慢だった。」と、丸山さんは思い起こします。
そんなある日、事態打開の道筋が開ける出来事がありました。
東京から帰省した際、父が作った縄文土器のレプリカを見て、昔から家の中に当たり前にあった陶芸の魅力を再確認し、急に身近に感じることができました。
「自分より長生きする作品を作っていきたい。陶芸にチャレンジしてみたい。」と思うようになりました。
この頃、趣味の陶芸を続けながら公務員として働いていたお母さんが、退職をきっかけに陶芸教室を始め、お父さんが体調を崩すなどの事情も重なり、帰省することを真剣に考えるようになりました。最初から最後まで自身で創作でき、後々まで形として残せる陶芸の世界に一歩を踏み出し、お母さんと一緒に教室を運営するかどうか、思い悩みました。
デザインを手掛けてきた自分に、果たして陶芸ができるかどうかー。
見通しが立たずに迷っていた時、ある友人から胸に響く言葉をもらいました。
「ものづくりをする人は素材が変わっても、やれる人はやれる。」
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