2018.11.29 [ 林業総合センター ]
林業経営の現場をじっくりと~森林・林業セミナー岐阜研修~
長野県林業総合センター指導部です。
当センターが実施している「森林・林業セミナー」では、森林・林業に関わる幅広い分野の研修を進めており、この中で一回だけですが、長野県を離れ、お隣の岐阜県へお邪魔しています。
せっかく、県外に出かけるのであれば、長野県内では見ることができない現場を訪ねてみたいということで、今回は江戸時代から大面積の森林を管理経営されている郡上市美並町にある古川家を訪ねました。
古川家は、江戸時代から続く林業家で、現在は約1,500haの森林を保有し、うち1,000haがスギ、ヒノキの人工林という大規模山林所有者です。今回お話をお伺いした14代目の当主さんは、「日本にある人工林の1万分の1が私のところの人工林」で、「持ち山は大体4㎞四方」だと話されましたが、規模感が全くわかりません。
とりあえず、事務所から外に出てみると、「見える山はほとんど我が家の所有」とのこと。
その規模に唖然としましたが、話はこれで終わらず、山を越えた隣町にも森林を保有しているとのことで、そこまでは案内できないけれど・・と言いつつ、車で移動して山の中へ。
所有している人工林は、ニホンジカの食害が増えているために、皆伐再造林を積極的に行う気持ちにならず、現在は間伐や択伐が中心になっているようです。
今年は、夏から秋にかけて襲来した台風により、多くの木が被害を受けてしまったとのことで、お邪魔した日は倒木の処理を進めていました。
今回の台風では、非常に強い風のために根元から横倒しになった木が多かったようですが、材質にはさほど影響がなかったということで、倒れた木材の様子を見ながら、丁寧に搬出をしていました。
本来ならば、もう少し育てたかったとのことですが、自然相手の仕事をすると、どうしてもリスクがあり、それでも山林を経営していかなければならないと考え、育てた木をできるだけ上手に利用する方法に苦心されていました。
育てた木を活かす取り組みとして、工務店との連携で、施主に伐採現場を見てもらう体験ツアーを定期的に開催しており、最近伐採を行ったという森林で、実際に伐採作業に従事された社員の方からお話を伺うこともできました。
江戸時代から現在まで、連綿と続いている古川家の森林を観ると、長期にわたる目標を明確にした山づくりを進めながら、その時代にあわせた順応的な管理をあたりまえのように展開しており、山づくりのモデルとして強い意識を持った研修になりました。
翌日は、同じ郡上市美並地区にある東海木材相互市場の美並サテライトにお邪魔して、お話をお伺いしました。
ここでは、トラックで運ばれてきた木材を一本ずつ検品して、買取をしています。
この日も、納入された木材を平らに並べて、木材の太さや長さだけでなく、曲がりの様子や節の様子、腐っているところや傷など、細かく検査をして、木材の価値を細かく分けていました。
ここで買い取りを行っているのは、スギやヒノキだけでなく、最近では薪の需要も多いということで、薪材も仕入れており、ピザ窯用に使う薪材の生産も行っていました。
ピザ窯用の薪は、料理屋さんに運ばれることを念頭に、虫が発生することが無いように、丁寧な皮むきを行うとともに、品質を安定させるためにナラとクヌギ以外は使わない管理を行っていました。
研修生も良質な木材を届けるために、非常に細かく丁寧な仕事を進めている姿に驚いていました。
こうして2日間の研修を今年も終えることができました。
隣同士とはいえ、県が異なると実施している山づくりも少しずつ異なっており、長野県とは違う森林・林業の姿を見せていただけたことはとても良かったと思っています。
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