信州森林づくり応援ネットワーク

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猪土手(ししどて)を改良しました

林業総合センター育林部の 「ぶらた森」です。

林業総合センターの構内には、「猪土手(ししどて)」があります。

猪土手は、イノシシやシカなどの獣が、田畑へ侵入してこないようにするため、耕地と山裾との間に0.5~1mほどの溝を作り、里側に1m程度土を盛り上げて土手を築き、土手の上に柵を設けたものです
看板の裏側から見てみると、溝が掘られているのがわかります。

実はこの猪土手。最初にできたのは、江戸時代中期の享保年間(1716年)以前のようです。
しかも、記録によると、この場所の猪土手は下の集落を守るという小さなものではなく、松本市の中山から塩尻市の洗馬まで、なんと28㎞にも及ぶとても長いものでした。
それだけの距離にわたって、溝を掘り、土手を築き、柵を設けたということは、当時の住民がいかに獣害に悩まされていたのかがよくわかります。

とはいえ、これだけ長い距離の猪土手を管理するのはとても大変です。
実際、ここにあった猪土手は、獣類の出没に悩まされなくなった江戸時代の終わりごろから使われなくなったようで、当センター構内で見ることができる猪土手は、当センターの開所に際し、昭和62年度に地元の有志がボランティアで復元したものです。

復元当時の写真を見ると、穴を掘って土を盛り、木を組んで柵を作っていたことがわかります。

しかし、木や土などの自然物で作ったものは、時間とともに劣化してしまうため、10年に一度くらいの割合で修繕を繰り返してきましたが、昨年度また柵が壊れてしまいました。

当センター周辺では、猪土手を復元した昭和62年当時にはなかったニホンジカの被害が、平成13年に確認されて以来、その被害に悩まされるようになりました。構内随所に防護柵を設置して、被害を防いでいます。

そこで今回、猪土手の修理に合わせて、現在使われている防護柵の見本も一緒に並べることにしました。

上の写真では2種類の柵を紹介しています。
奥にあるのが金属製のフェンスタイプ、手前はステンレス線入りのネットタイプです。
このほか、下の写真にように、ホームセンターで購入できるような簡易な柵も展示しています。

改めて現在の防護柵と江戸時代の猪土手を比べてみると、材料の違いこそあれ、物理的に獣類が入らないようするという考え方に変わりがないことがよくわかります。
猪土手の修理に合わせて、各地で使われている防護柵を並べてみると、300年前の人たちが悩まされてきた獣害防除の知恵が、現在でも十分に活かされていることを感じます。
これまでは、江戸時代に作られていた猪土手を復元しただけだった施設ですが、今回の改修で、江戸時代から現在に至る獣類との戦いの歴史を垣間見ることができる施設に変わりました。

今回改良した当センター構内の猪土手は、森林学習展示館よりも山側に位置するため、一般公開はしておりません。もし、見学されたいという方は、「森林学習展示館」へ立ち寄っていただき、展示館の職員に一声かけていただくようお願いいたします。

森林学習展示館は、日曜祝日も開館しており、駐車場も完備され、月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)を除く9時から16時までは職員が常駐しています。

〈本件に関するお問い合わせ先〉
林業総合センター 育林部
TEL:0263-52-0600
FAX:0263-51-1311
E-mail:ringyosogo@pref.nagano.lg.jp

林業総合センター 森林学習展示館
TEL&FAX:0263-88-2035 (展示館直通)

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