2016.05.10 [ 林業総合センター ]
山でめだつ白い花
林業総合センター指導部です。
サクラの季節が終わり、新緑がまぶしくなった山を巡っていると、あちらこちらで白い花を見かけるようになりました。とはいえ、今年は特に白い花がめだつ気がしたので、近くの山野を巡ってみました。
まず目に飛び込んできたのが、コップを洗うブラシのような穂になった白い花。
これは、ウワミズザクラと呼ばれるサクラの仲間です。
房になった花を見てもとてもサクラに見えませんが、近づいてよく見てみると、5枚の白い花びらがあり、葉っぱもサクラとよく似ているなど、サクラの仲間であることがわかります。
でも、昨年はあまり見かけなかったなあと思って、昔の記録を辿ってみると、良く咲く年とあまり咲かない年が交互にやってくるようです。
もう少し山の尾根の方まで登っていくと、別の白い花が咲いていました。先ほどのウワミズザクラとは異なるさらに白さを増した顔をしています。
こちらも近づいて見てみると、細長く伸びた花びらがまるで御柱祭の「おんべ」のようにも見えてきます。これが、コバノトネリコ(別名アオダモ)の花です。
こちらも、あまり花を見かけないなあと思って調べてみると、ちゃんと咲くのは3年に一度。他の年にはほとんど咲かないようです。
2年に一度多くの花を咲かせるウワミズザクラと、3年に一度しか咲かないコバノトネリコの花が一緒に楽しめるというのは、単純に言えば6年に一度。両方の花が一緒に咲いてくれたことで、近年になく白い花が目立ったというわけです。
別に「おんべ」に掛けたわけではありませんが、諏訪大社の御柱祭が開催されるのに合わせて両種が一度に開花しているというのも奇妙な一致かもしれません。
新緑のこの時期、ウワミズザクラやコバノトネリコだけでなく、他の樹木の花も白い花が多く咲いています。先ほどのウワミズザクラの写真を撮影した脇では、ズミの白い花も咲いていました。
この先も、ヤマボウシやミズキなど野山を彩る花の多くが白い花を咲かせてくれます。
なぜこの時期に白い花が多いのかは、よくわかりませんが、新緑の葉を背景にしていると、白い花というのはとても目立つ存在であることは、間違いありません。
昆虫や鳥などの動物に花粉や種子を運んでもらうことで子孫を残すことが出来る植物にしてみると、目立つことはとても重要なわけです。
実際、まだ木々の芽吹きが見られない春先には、マンサクなどの黄色い花ばかりが咲いています。この理由の一つとして、早春にいち早く活動をはじめる昆虫であるアブやハエの仲間が黄色い色に敏感に反応するため、昆虫に見つかりやすい色にしているとの説もあるようです。
野山に出かけて咲いていた花を記録していたことで、毎年花を咲かせてくれるものばかりではないことがわかります。今回ご紹介したウワミズザクラやコバノトネリコのように規則的に咲いてくれるのであればまだ良いのですが、数年に一度程度は咲いてくれるものの、どのような周期で咲いてくれるのか未だにわからないという樹木も数多くあります。
そんな目線で野山の樹木を観察してみると、面白い発見があるかもしれません。
〈本件に関するお問い合わせ先〉
林業総合センター 指導部
TEL:0263-52-0600
FAX:0263-51-1311
E-mail:ringyosogo@pref.nagano.lg.jp
このブログへの取材依頼や情報提供、ご意見・ご要望はこちら
林務部 森林政策課
TEL:026-235-7261
FAX:026-234-0330