信州森林づくり応援ネットワーク

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【信州「森に通う道」シリーズ】祝!林業遺産認定~「進徳の森」の巨木を訪ねて~(伊那市高遠町)

「巨樹・古木」好きの森林政策課のCです。
去る5月29日、日本森林学会から2017年度の「林業遺産」の発表があり、伊那市高遠町の「進(しん)徳(とく)の森(もり)と中村(なかむら)弥(や)六(ろく)の関連資料群」が新たに認定されました。今回は、この認定に関わる巨木の紹介をします。
まずは、林業遺産認定のプレスリリース。詳しくはコチラをどうぞ。

http://www.pref.nagano.lg.jp/ringyo/happyou/180529press.html

高遠藩出身の中村弥六氏(1854~1929)は、藩校「進徳館」に学んだ後、江戸での勉学を経て自費でドイツに渡り林政学や森林経理学などの近代林業を学びました。帰国後は東京山林学校(現東京大学農学部林学科)の初代教授となり、1899年には日本初の林学博士に。森林法の制定や林業教育の整備など、日本の林学や林政に深く関わり、「近代林学の父」「日本林業の祖」などと呼ばれています。

こちらは、弥六氏の人生を綴った「中村弥六物語」(高遠ふるさと叢書③森下正夫著)の表紙。弥六氏、このようなお方です。
写真1
















弥六氏が学んだ藩校「進徳館」は、誠に小さな藩ながら明治期の偉人を多く輩出。特に、「孝悌忠信」を教育目標に置く実践・実学重視の教育方針で知られ、その下で身につけた精神は、後に、地域に暮らす人々が山林原野を活用することによって、民の暮らしと森林を豊かにするという弥六氏の信念にも繋がっています。

こちらは現在公開されている藩校進徳館。高遠城址公園にあり、庭には自由に入ることができます。
写真2進徳館
 










写真3進徳館室内












1911年頃、故郷高遠の峰山寺(ほうざんじ)(中村家墓所)の裏山が豪雨で崩壊しました。その復旧のため、弥六氏は墓所周辺の土地を購入し外国産の樹木を農林省林業試験所(当時)から取り寄せて移植しました。この森(0.6ha)が、1960年に御遺族から高遠町に寄贈され、藩校進徳館にちなんで「進徳の森」と名付けられ保存されています。
植栽後100年近くになる現在も、直径1mを超えるヒマラヤスギをはじめ、樹高35mのユリノキなど、7種類34本の外国産の樹木が生育。貴重な観察の場となっています。

ここまでの情報だけでも単なる巨木好きとしては、その森に行きたい衝動に駆られるのですが、役所の中で林政を担当している身としては、中村弥六先生の林業への思い、治山・治水への思い、自治の精神など、自身が初心に帰る意味においても非常に意義深い訪問になるという期待を持って「進徳の森」を訪ねました。

高遠城址公園のすぐ東の山麓、こちらは中村家の墓所でもある峰山寺。背後の山の一部が「進徳の森」です。案内版などが整備されています。
写真4峰山寺と進徳の森
















順路に従って坂を上って行きます。
こちらは墓地へ通じる階段です。(順路ではありません)
写真5峰山寺階段
















すぐに「進徳の森」に着きました。きれいに整備されています。
カヤなどの国産の樹木とともに様々な種類の樹木がみられます。
写真6モミなど
















おっと、弥六先生のお墓です。合掌。
写真7弥六氏墓
















すぐその近く。見事な100年超えの2本のユリノキの巨木。胸高幹周は3m程あります。
北米東部原産。
信州大学農学部のユリノキ並木(戦後植栽)が有名ですが、農学部の木よりも迫力を感じます。
写真8ユリノキ1
 
















写真9ユリノキ2

















さらにさらに。こちらはドイツトウヒ。ユリノキほど太くはありませんが、それでも2m弱の幹周。
写真10ドイツトウヒ
















次は北米原産のリキダマツ。
写真11リキダマツ
















こちらはヨーロッパクロマツ。
写真12ヨーロッパクロマツ
















北米、カナダ原産のストローブマツ。
写真13ストローブマツ
















そしてこちらが、この森で一番太い巨木。ヒマラヤ原産のヒマラヤスギ。胸高幹周は約4mと迫力満点です。
写真14ヒマラヤスギ★
















現在では普通に見られるようになったドイツトウヒやヒマラヤスギですが、当時としては初の試みでしょう。でも、外国産の樹木をやたら適当に植えたのではなく、被害地の復旧を目的に植えられたその木は、100年経過した今も、しっかりと山の土をつかみ、墓地を守っています。

帰りにお隣の桂(けい)泉院(せんいん)への小径を歩いてみました。
小径沿いに桂泉院の名のもととなったカツラの巨木がありました。
写真15桂泉院のカツラ
















歩いてきた峰山寺や「進徳の森」方面を振り返ると、こんな感じです。
写真16桂泉院から峰山寺への小径
















高遠は散歩するだけでも楽しい町ですね。神社仏閣も多く、御朱印帳を片手に歩くのも良いですが、サクラで有名な高遠城址公園もあり、巨木・古木マニアには最高です。
また、今回の「進徳の森」の林業遺産認定で、郷土出身の中村弥六氏の偉業を振り返ることができ、残された巨木に、藩校進徳館の「学び」の精神と、自立・自治に向かって邁進した先人の姿を見ることができました。

弥六氏の遺書には、「百年の後必ず我を知るものあらん」と記されています。これは様々な氏の政治的活動を振り返っての言葉のようですが、「進徳の森」について本人がコメントした記録は残っていない(見つかっていない)とのこと。謎は少し残っていますが、木や森は10年、20年では育たない、林政も国造りも百年の計だよと、「進徳の森」で百年の時を経て私達に語りかけているような気がしました。
明治150年の今年、皆さんも林業遺産に認定されたこの森を訪ねてみませんか?

 

※ 里山など案外身近な所で巨樹・古木は私たちの暮らしを見守っています。さて、次は、どんな巨木との出会いがあるでしょうか。

参考までに、これまでブログにアップした巨木情報のリンクを貼り付けます。

①権現山のダケカンバ(伊那市) http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/564.html
②経ヶ岳山麓の巨木(伊那市・吹上のイチョウ、南箕輪村・大泉川源流のブナ等) http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/553.html
③長野県で最も太いサワラ(伊那市・前平のサワラ、仲仙寺の相生スギ等) http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/533.html
④長岡八幡宮のハリギリ(箕輪町) http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/519.html
⑤信大農学部のユリノキ並木(南箕輪村) http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/504.html
⑥ケヤキの巨木(箕輪町・木下のケヤキ、伊那市・白山社八幡社合殿のケヤキ) http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/473.html
⑦アカマツの巨木(伊那市・久保田のアカマツ、長谷のカラカサ松、駒ヶ根市・馬止の松) http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/449.html
⑧みどりの少年団の森のメタセコイア(箕輪町) http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/405.html
⑨サクラの名木(箕輪町・中曽根のエドヒガン、南箕輪村・北殿のエドヒガン)http://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/397.html
⑩陣馬形山のブナ(丸尾のブナ)

http://blog.nagano-ken.jp/mori/%e3%80%90%e6%83%85%e5%a0%b1%e7%99%ba%e4%bf%a1%e3%80%91%e4%bf%a1%e5%b7%9e%e3%80%8c%e6%a3%ae%e3%81%ab%e9%80%9a%e3%81%86%e9%81%93%e3%80%8d/7717.html

⑪セラピーロードでリフレッシュ!~「信州大芝高原みんなの森」の春~

https://blog.nagano-ken.jp/mori/%e3%80%90%e6%83%85%e5%a0%b1%e7%99%ba%e4%bf%a1%e3%80%91%e4%bf%a1%e5%b7%9e%e3%80%8c%e6%a3%ae%e3%81%ab%e9%80%9a%e3%81%86%e9%81%93%e3%80%8d/8271.html

⑫パワースポット近くのカツラの巨木 ~結の桂(ゆいのかつら)~https://blog.nagano-ken.jp/mori/other/8316.html
⑬集落見守るイチョウの巨木~神戸(ごうど)の大イチョウ~(飯山市)

https://blog.nagano-ken.jp/mori/%e3%80%90%e6%83%85%e5%a0%b1%e7%99%ba%e4%bf%a1%e3%80%91%e4%bf%a1%e5%b7%9e%e3%80%8c%e6%a3%ae%e3%81%ab%e9%80%9a%e3%81%86%e9%81%93%e3%80%8d/8345.html

⑭宮田高原の巨木たち(宮田村)https://blog.nagano-ken.jp/mori/other/8371.html

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