2025.08.12 [ その他 ]
【このひと】地域や仲間とともに創る空間=「珈琲アウラ」経営の小倉さん=
\商工観光課(たいぞう)より、長野地域で奮闘する方をご紹介します/
長野県では、「日本一創業しやすい県づくり」を目指し、新たに創業したい方向けに、窓口での相談・助言や、各種創業セミナーの開催といった創業支援を行っています。
今回、創業者として、長野県立大学(長野市)在学中にコーヒースタンドを開業し、今年5月に2店舗目「珈琲アウラ」をオープンした小倉翔太さん(26)にお話を伺いました。
静岡県出身。高校生の頃からコーヒーが好きで、近所の豆販売店に通い、自分でコーヒーをいれていました。
「国公立大学でありながら海外留学が必須だったことと、寮生活が楽しそうだった」ことから長野県立大に進学しました。
大学入学とともに、大手コーヒーチェーン店でアルバイトを開始。そののち、「コーヒーを専門的に学びたい」という思いから、品質が保証された「スペシャルティーコーヒー」を扱う丸山珈琲でも働き、コーヒーに対する知識や感覚を学び、独学で焙煎の勉強も始めました。
ただ、「自分がやりたいことと、実際にやっていることに差があり、それに対して疲れてきていた。自分は会社で働くのは向いていないのかもしれないと思った」と当時を振り返ります。
2年生のとき留学したニュージーランドの大学でカフェの営業があったことから、帰国後、「大学に相談して県立大内でカフェをやりたい」と、コーヒーサークルを立ち上げました。
しかし、立ち上げ直後にコロナ禍に見舞われ、学内での活動を休止。
長野市・権堂の旧イトーヨーカドー跡地で行われていたマルシェなど、仲間とともに市内のイベントで出店を始めました。
様々な場所で露店営業する中、「決まった時間に決まった場所で開いていないと、お客さんにはなかなか来てもらえない」ことに気づきます。「『この場所に行けば店がある』と思ってもらう必要がある」。

創業について語る小倉さん
コーヒースタンド「ODDO coffee」創業に向け、社会課題解決に取り組む創業者への支援を行う県立大の地域連携拠点、「ソーシャル・イノベーション創出センター(CSI)」に、経営などについて相談。長野駅前の店舗の場所も、CSIが大家さんにつないで決定したそうです。
また、県の「信州スタートアップステーション(SSS)」の支援により、コンサルティング会社と定期的に面会し、創業に向けたステップへの助言を受けたりしていました。
「在学中に知り合った学内、学外の人たちに相談できる環境の中で、自ずと創業に至った」と語ります。
就職活動の時期が迫っていましたが、「会社で働くことに自信がなかったので、就活するよりも自分でお店をやった方がいいかなと。アルバイト時代の気持ちをバネにして、淡々と手続きをこなしていたらオープンの日になっていた」。

長野駅前の「ODDO coffee」
最初は4人交代でお店に立っていましたが、オープン2年目からは一人で営業。
「一人で店に立つと、店内に置くものなど空間として納得いかない部分が目につき始めた。規模感を大きくして、コーヒーが好きでない人も『いいな』と感じるお店を開きたいと思っていた」。
そんな折、知人から長野市東鶴賀町の築75年ほどの古民家を紹介され、リノベーションして「珈琲アウラ」を開業しました。

「珈琲アウラ」の外観
「ODDO coffee」では外国人と接する機会が多く、その土地の民俗性や郷土色を映し出す「民芸」の考え方を大切にしたいと思うようになったといいます。
「海外から来た人にとっては、その土地固有のものが、とても貴重に思える。地域に根差しつつ、外から見たときには、土地固有の雰囲気を持つことが大事」。
家具の配置など店内の構成は、「日本的なものを重視して」(小倉さん)、設計士に要望を伝えて依頼。
椅子はR-DEPOT(長野市)から入手して座面を張り替え、コーヒーカップは県内の陶芸家に依頼して作ってもらったもの。お店のレトロな雰囲気に一役買っています。

「珈琲アウラ」の店内

コーヒーカップなどの食器類
また、庭は大家さんが整備し、近所の人から大量の梅をもらうなど、地域ぐるみで応援されています。
「街中で、地域の方のご協力を得ながらお店を開けていることはうれしい」と小倉さん。
小倉さんのほかに、スイーツ担当や夜喫茶担当など、いずれも県立大の学生や卒業生でお店を運営。当面、新たにスタッフを募集する予定はないそうです。
「『ODDO coffee』よりも、常連で来てくださっている方の割合が高い」という珈琲アウラ。
今後は、コーヒーだけでなくスイーツの素材にもこだわり、雰囲気は「落ち着いていて、穏やかに周りの空間に目に行くような状態」にしていきたいといいます。
「生産地ごとに、土地柄や品種、栽培技法、風土によって形づくられる味を楽しめるのがスペシャルティーコーヒーの特長。自分たちも、この地の風土を認識して、ここにしかないお店をつくっていきたい。自分たちがお客さんに届けたいものをはっきりさせて、それを楽しんでくださる方と、長く一緒に続けられるお店にしたい」と語りました。
このブログへの取材依頼や情報提供、ご意見・ご要望はこちら
長野地域振興局 総務管理課
TEL:026-234-9500
FAX:026-234-9504