こんにちは!農地整備課のKS47です🤪
先日、野沢温泉村にて、「株式会社藤巻建設」主催の地元説明会が開催されました。
「池の沢川水力発電所」は、「準用河川 池の沢川」から、距離 約1.7㎞にわたって0.34m3/sの水を引き、落差142.8mを利用して発電を行う小水力発電所です。
最大出力は380kW、年間で2,319MWhの発電量(500~600世帯分)を計画しております。
一口に小水力発電施設と言いましても、利用できる水の量や、確保できる標高差などにより、様々な発電方法が存在します。
詳細は省きますが、ここでは大きな落差で小流量の地点に適していると言われる「ペルトン水車」という水車で発電を行います。
こちらがその水車です!
どうですかこの複雑な形状
水車の奥に見えている赤い部分から、水車の“お椀”めがけて細く絞った水が噴射され、その勢いで水車を回し、発電するのです。
因みにこの水車、完成時にはケースに収められてしまうので、見ることが出来ません
水車の複雑な形状は、噴射された水の速やかな排出や、効率よく回転力を引き出すなど、ち密に計算されたものです。
この水車は、ステンレス鋼の塊を、「削りだし」で造られているのですって!
そして、その製作は、日本国内の企業が担っているとのこと!
小水力発電の本場と言えばヨーロッパが盛んで、ひと昔前までは、水車や発電機と言えば、海外から輸入して調達するのが一般的、という感覚でしたが、こんなに複雑な形状の水車を国内で製造できるとは、非常に感慨深いものがありました。
一緒に説明会に参加された地元の皆さんも、目を輝かせてご覧になっておりました。
しかし、私の中では、別の意味での感動があったのです。
「・・・これが、本来の規模のペルトン水車なんだ!」 と。
話は遡ります。
県の農地整備課では、ゼロカーボン戦略への取り組みの一つとして、農業用水路を流れる水を利用した小水力発電所の建設を進めております。
そして私自身も、飯綱町において、歴史ある農業用水路「芋川用水」を水源とした小水力発電所の建設に携わっております(そのお話は、また別の機会に・・)。
ここでももちろん発電のための水車が必要になるのですが、本工事では、なんとその水車(新型クロスフロー水車)を長野県内の企業さんが製作しているのです。
その企業さんは須坂市に拠点を構える「株式会社 新井製作所」です。
元々は発泡スチロール容器の金型などを製作する会社でしたが、その金属加工技術を信州大学の飯尾准教授に買われ、新型クロスフロー水車の研究開発に協力、新技術の確立に大きく貢献しております。
その新井製作所においても、ペルトン水車との出会いがあったのです。
机の上に無造作に置かれたこのコンパクトな装置・・・
驚くことなかれ!これも歴とした小水力発電施設の一部(実物)なのです
こちら、五味池破風高原オートキャンプ場にて、水道用水の余り水を利用して、40mの落差を使い、200Wの発電を行います。
利用する水の量は微々たるもの(0.0014m3/s)ですが、200Wの発電を行うことで、キャンプ場にてLED電球8個、蛍光灯2基、温水器2台を稼働することが可能となりました。
この「電化」は、キャンプ場の快適度向上に大きく貢献しております!
ちなみに写真では手前側をアクリル板で覆っておりますが、実際もこの状態で運転可能とのことです。
そして装置の中心に鎮座するひまわりの花・・ではなく、水車。
左側から延びる上下2本のノズルから水が発射され、回転する仕組み・・
そうです。
先に紹介したのと同じ形。こちらもペルトン水車なのです!
脇に置いてあった水車を手に取ります。
直径は10㎝ほどでしょうか。小さいながらも、非常に複雑な形状が見事に造形されております。
写真を比較すると、そのスケールの違いに圧倒されますが、確かに同じ形です。
こちらの小ペルトン君。さすがに削り出しで製作されたのではなく、金属3Dプリンターにて製作されたとのこと。
ペルトン水車は、幅広い落差に対応可能な発電形式ですが、今まではその複雑な形状から、「マイクロ水力発電」の現場では採用が難しい形式でもありました。
しかし、今回この小型化に成功したことで、同様の現場でも発電が可能になり、更にエネルギーの地産地消が可能になると思われます!
余談ですが、今回の事例では、関連工事費も含めて400万円ほどと、非常にリーズナブルとなっておりますが、これは売電を目的としないため、制御盤価格を抑えられたことが大きいようです
因みにこちらの発電施設が設置されたのは、国立公園の真っ只中。
環境配慮にも厳しいと思われるこの場所で認可を得られたことは、この発電施設がコンパクトで自然環境にもやさしく設置が可能であることの証明だと思われます。
(初めて五味池に電気がついた瞬間です。新井製作所様より提供)
・・・大きな水車に小さな水車。
両極にある二つの水車ですが、このどちらも国内で、更に片方はこの長野県内の企業の技術力で製作されていることは、稼働後のメンテナンスのことを考えても、非常に心強い限りです
県が推進するゼロカーボンへの取り組みが、更に県内企業の技術力で推し進められることを願います!
最後になりますが、この貴重な見学の機会を与えてくださった株式会社藤巻建設の方々、また、丁寧に製作現場の案内をして下さった新井製作所の皆様に御礼申し上げます。
今後も県内の発電適地の発掘と開発に邁進されることをお祈りしております!
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