信州森林づくり応援ネットワーク

あなたにちょうどいい森林との付き合い方を探す場所、それが「信州・森林づくり応援ネットワーク」です。楽しみ方を発見すれば、森林との距離はグッと縮まりますよ。信州には、森や山などの自然に魅了されている多くの人がいます。そんな人々が、きっかけのほしいあなた、つながりを求めているあなた、スキルアップしてみたいあなたをご案内します。信州の木を使った取組の話題もありますよ。

飛騨の森で広葉樹の可能性を知る

長野県林業総合センター指導部です。

当センターが実施している「森林・林業セミナー」の目玉行事である岐阜県への研修。
今年度の研修では、岐阜県の北部にある飛騨市が行っている、「広葉樹のまちづくり」を学ぶとともに、そのための広葉樹林の施業方法についても議論を深めてきました。

研修の始まりは、2017年度から「広葉樹のまちづくり」を進めている岐阜県飛騨市。まずは市役所で、林業振興課の竹田慎二さんから、取り組みの全体像を紹介していただきました。

森林率93%の飛騨市では、その7割を広葉樹が占めるという全国的に見ても広葉樹資源が豊富なことから、これを柱に地域づくりをしようと調べてみると、平均の胸高直径が26㎝程度の広葉樹林が多く、パルプやチップ、薪にしか使えない材料でした。
もっと太くて良質な広葉樹が育てば、隣の高山市で家具材として充分に使える材料になるはずですが、今の状態では小径木のため、チップでしか販売できません。これではいつまでたっても立派な広葉樹には育たないのではと考え、森林整備により価値の高い広葉樹を育てながら、様々なアイデアやネットワークを駆使して、小径材にも新たな価値を吹き込む支援をしているとのことでした。

全体の取り組みをお聞きしたあとで、まずは山側の様子を知るため、今年度伐採を予定しているという飛騨市の市有林を訪ねました。

市有林では、取り組み開始から広葉樹の森林整備を請け負っている、飛騨市森林組合の担当職員にお越しいただき、実際の森林整備の方法や選木の方法など、施業にあたってのポイントを紹介していただきました。

そのうえで、次は飛騨産の広葉樹を挽く西野製材所へ。飛騨市で進めている「広葉樹のまちづくり」において、欠かせないのが、太くても細くても製材品を作ることができる製材工場。
時には、高山の家具に使うからと外国産の大径木も挽くという西野製材所の西野社長さんから、地域の材を挽いて乾燥材として使えるようになるまでの現場を紹介いただきました。

西野製材所は、木材に対する豊富な知識と経験があり、見学に訪れた時もキハダやクルミなど多くの広葉樹を丁寧に挽いていました。
ここで挽いた木材は、そのまま工場の敷地で天然乾燥され、一年以上乾かしたのちに初めて板として使えるようになります。工場のまわりには所狭しと、板が並べられ、この中には床板用として昨年度に伐採したブナの板も乾かされていました。

乾燥した板が出来上がれば、初めて製品作りの工程に入ります。

製品作りの拠点は、西野製材所から徒歩圏内にあるFab Café Hida
この建物は小京都と呼ばれる飛騨古川の町中にある古民家をリノベーションした施設で、コーヒーを飲めるカフェの機能と、ものづくりを行うスペースが一体になった施設です。

古民家を改装したカフェは築100年以上という母屋が改装され、高山の木製家具が置かれるなどリラックスできる空間となっています。ものづくりの雰囲気を感じるのが、カフェスペースのまわりに置かれた、3Dプリンタや、レーザーカッター。
コーヒーを飲みながら、モノづくりのアイデアを生み出す工夫が施されています。

母屋の奥にある蔵にお邪魔すると、カフェの雰囲気とは異なり、様々な工具が並ぶ木工所。ここでは、国内外から飛騨の木を使ってみたいというデザイナーなどのクリエーターが試作品を作るとのことです。

Fab Café Hidaを運営しているのは、飛騨市と市外の民間企業2社とともに設立した第三セクターの株式会社飛騨の森でクマは踊る。飛騨市で伐った広葉樹材が国内外のクリエーターとコラボレーションにより、斬新な木製品の企画、製作、販売を手掛けており、ここがきっかけとして生まれた製品が国内外で評価を受けているようでした。

研修初日は、クリエーター気分を味わおう!ということで、Fab café Hidaに泊めていただき、翌日は朝から広葉樹林の育て方をきちんと学ぶこととしました。

2日目は、飛騨市から車で一時間ほど離れた高山市荘川へ。
ここは、岐阜県高山市にあった、岐阜県寒冷地林業試験場が広葉樹林の育て方や管理の方法を研究するために作った試験地で、広葉樹の植栽試験地ができた初期のころから現在まで関わり続けてきた、現岐阜県立森林文化アカデミーの横井秀一教授にご案内いただきました。

横井教授は、岐阜県に入庁した初任地で岐阜県管理地林業試験場に勤務され、当時植栽したばかりの広葉樹人工林試験地を担当されたとのこと。
植えてから30年を超えて大きく育つまでをずっと見続けてきたということで、話にも重みがあります。

広葉樹の植栽にあたっては、適地適木を意識して沢に近いところにカツラを植栽し、その上にケヤキ、さらに高いところにクリを植えたとのことです。
植えてからの育成方法についても、ウサギの食害を受けてしまった話や、強度な間伐をして後生枝が大量に発生してしまった話など、長年にわたって関わり続けたからこそ分かることが多く、私にとっても受講生にとっても大きな学びを得る時間でした。

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