2019.08.15 [ 林業総合センター ]
切れるチェーンソーは目立てから
長野県林業総合センター 指導部です。
山仕事には欠かせないチェーンソーですが、危険な作業となってしまうことから、当センターでも森林所有者や林業従事者を対象として、労働安全衛生法に基づく特別教育として3日間の講習を実施しています。
チェーンソー作業を安全かつ効率的に実施するためには、日常の点検整備が重要ですので、講習の中でも時間をかけてお話ししています。
日常の点検整備の中で、重要でありながら、その効果がなかなか理解されていないのが、目立て作業。講習の際には、「普段使用しているチェーンソーを手入れして持参してください」とお願いしており、丁寧に目立てを行ってくる人もいれば、「目立てを行ったことがない」という強者もいて、教え方を悩んでいました。
そこで、目立ての効果を実感してもらうことが重要ではないかと考え、点検作業の実習に先立って、受講生が持参したチェーンソーを職員が預かり、実際に丸太の輪切りを行って、どのくらいの時間で伐れるのかを計測してみました。
その後、全員で点検整備を行いますが、刃の目立てにも十分な時間をかけます。講師をつとめる職員も全員のチェーンソーを見回しながら、指導をしていきます。
こうして、30分程度の時間をかけて、丁寧に目立てを行っていただいた後で、もう一度同じ大きさの丸太を輪切りにして輪切りの時間を測ります。
その結果を並べてみたのが、下の図です。
人によって多少の差はありますが、上段の目立ての作業前に比べて、作業後の方が明らかに早くなっている人が多いことがわかります。
輪切りに使う丸太は工業製品ではないので、誤差はありますが、ほとんど目立てをしていなかった人でも、丁寧に目立てをすれば、早く伐れることが数字として実感できるようになります。
こうしたことを何回か繰り返すと、一定の傾向が見えてきます。
それぞれの受講生が持ってきたチェーンソーで、輪切りに要した時間(鋸断時間)を下に示すように図にしてみました。この図では、目立ての講習を行う前の普段の時間を横軸に、今回の目立て講習を行った直後の時間を縦軸にして、166人を対象として実施したデータが点で表記されています。
図の真ん中に黒い斜めの線が入っているのが、目立ての前後の鋸断時間が同じとなる場合ですので、黒い線よりも下に点があれば、目立て講習を受けて輪切りの時間が短くなったことを示しており、目立ての効果といえます。
今回の結果から、目立ての講習を行う前の普段の状態で、今回使用した直径20㎝のアカマツ丸太を10秒以内程度で輪切りができた場合は、目立ての講習を行ったとしても、実感できるほど鋸断時間が短くなることはありませんでしたが、20cmのアカマツ丸太の鋸断時間が20秒以上かかってしまった方では、多くの方の鋸断時間が短くなっていました。
この結果は、平成30年度の中部森林学会で報告させていただき、そこで発表させていただいた概要は、当所のホームページでも紹介しています。(チェーンソーの目立て効果)
チェーンソーは、作業時に多くの振動を受け、身体への悪影響も大きいことから、一日でできる作業時間が限られています。
自分のからだにやさしく、作業の能率を上げるためにも、チェーンソーの目立てはとても大切です。
当センターで実施している伐木造材講習(労働安全衛生法に基づく特別教育)は、森林所有者や林業従事者など、森林整備のためにチェーンソーを使用される方を対象として講習を開催しています。開催日程や申し込み方法等の詳しいことは、林業総合センターのホームページをご覧下さい。
なお、建設業、造園業、電気工事等、林業以外の業務においてチェーンソーを扱われる方は、林業・木材製造業労働災害防止協会(略称:林災防)長野県支部が主催する講習を受講してください。
〈本件に関するお問い合わせ先〉
林業総合センター指導部
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FAX:0263-51-1311
メール:ringyosogo@pref.nagano.lg.jp
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