井月さんのこころ　シリーズ　その３７
　伊那谷でも氷点下の朝を迎える季節となりました。
　霜柱が朝日を浴びてキラキラ輝いています。
　写真：　霜柱が立った田畑

　井月さんが詠んでいます。
　冬ざれや壁に挟みし柄なし鎌　　井月

　以下、この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力　その俳句鑑賞」（ほおずき書籍）から引用させていただくと・・・、

　初五或は夕顔や、行秋やとも。推敲を繰り返したのだ。私には冬ざれが面白い。冬ざれは、草木の枯れて荒涼たる様子。また、冬の時季。鎌を砥石で研いでは草木を刈る。刃が丸くなって切れなくなるとまた研ぐ。
　固い鉄も長年研ぐと減って細くなり、柄が傷んで使えなくなった柄なし鎌を捨てもならず、小屋の板壁に挟んでおく。柄なし鎌に農民の丹精が見える。
　（冬ざれ・冬）

　先週２２日（金）、上伊那広域水道用水企業団議会の開催に併せて企業団の水源である箕輪ダムの現地視察が行なわれました。
　箕輪ダムは、天竜川水系沢川総合開発事業による洪水調節・河川環境保全・上水道用水供給の多目的ダムで、昭和４９年度から１９年の歳月と２８５億円余を投じて平成４年に完成した県営ダムです。
　ダムから一日最大５万㎥（0.579㎥/ｓ）を取水し、自然流下により途中の天竜川の下を潜って逆サイフォンで８ｋｍ離れた対岸の箕輪浄水場まで導水し、薬品沈殿、急速ろ過により浄水処理した水道用水を一日最大46,500㎥、総延長62.7ｋｍの送水管によりダムが所在する箕輪町をはじめ南箕輪村、伊那市、宮田村、駒ヶ根市の５市町村の配水池へ供給しています。
　上伊那広域水道用水企業団は、昭和55年４月に設立認可された長野県と５市町村で構成する一部事務組合です。
　本年５月31日、歴代伊那市長が就いていた企業長に箕輪町の平澤豊満町長が第６代企業長として就任され、また、企業団議会には従前から県知事が議員になっておりましたが、県環境部長が就くこととなりました。
　箕輪ダムは完成から２０年を経過し、設備の老朽化が著しいため今年度から平成30年度にかけて堰堤改良事業を約６億円かけて実施することになりました。今年度のダム管理用制御処理設備の設計業務から改良事業が始まります。
　22日は、ダム設置者であり企業団構成団体の長でもある阿部知事が企業団議会（議長・佐々木県議）の皆さんと一緒に視察を行ないました。

　議会の皆さんより少し早めに現地に到着した阿部知事、白鳥伊那市長さん、杉本駒ヶ根市長さんと堰堤の内部にエレベーターで降りてみました。温度は一年を通じて13度程度に保たれ、堰堤の傾きはほとんどなく安定しているとのことです。
　このダムは水道用水取水ゲートがあるものの放流ゲート無しの坊主ダムで、例年は余水が生じない時期だそうですが、今年は水量が豊富なため、堤頂近くにある標高846.5ｍ（満水位）の放流口から西日を受けたきれいな余り水が流れ落ちていました。
　　写真：　箕輪ダム　余水

　この写真は、ダム堤体の中途から外へ出て振り返って見たもので、ダム建設に伴い湖底に沈んだ長岡新田集落へ通じていた旧道の辺りから見上げたものです。
　このダム湖は「もみじ湖」と呼ばれる紅葉の名所で、長岡新田集落３７戸が湖底に沈んだ経緯を踏まえ「将来にわたり愛されるダムにしよう。」と当時の地権者組合長の戸田七郎さんが苗木を育て植栽したもので、その後も地元長岡区が植栽を続け、今や一万本余りのモミジ景勝地に育っています。
　冬ざれで見頃は既に過ぎていましたが、ダムの周辺は名残のモミジが彩りを添えていました。
　また、ダム上流の山林は、諏訪・上伊那の両郡に跨る２１集落の財産区や生産森林組合などの入会林であり、「水源確保のためには水源林造成を」と当時のダム集水域地権者協議会長の山口豊春さんの主張を受け「沢川水源の森整備基金」１億円（県出資６千万円）を設置して、森林整備事業を助成することなどにより水源涵養が図られています。
　もみじ湖の過去記事をご覧ください。
　　2012.10.28　上伊那地域の紅葉情報～もみじ湖（箕輪ダム）編～
　　2012.11.01　上伊那の紅葉情報　～続報!!　もみじ湖(箕輪ダム)編～
　　2013.11.08　もみじ湖もみじ景勝地　～もみじ景勝地はまだまだ見ごろ～