い~な 上伊那 2つのアルプスと天竜川からなる伊那谷の北部に位置し、雄大な自然に囲まれた上伊那地域。 この地域の自然、食、歴史や地域のがんばる人々など、私たち職員が見つけ、感じた上伊那の魅力と地域の活力を発信します。

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人の日に【井月さんのこころ43】

井月さんのこころ シリーズ その43
 年末・年始の9連休の間、上伊那管内には防災情報、警報・注意報の発令が一件もない「日々是好日」の穏やかな年明けスタートとなりました。
 そして7日は、七草でした。
 旧暦ですと2月の立春を過ぎた頃になりますが、近頃では新年早々に七草をセットにした商品が売られるようになり、新暦でも七草粥をいただけるようになりました。
 芹(セリ)、薺(ナズナ)、御形(ゴギョウ)、繁縷(ハコベラ)、仏の座(ホトケノザ)、菘(スズナ)、蘿蔔(スズシロ)の7種
 七草粥は、薪ストーブの上で少し遠火にしてタジン鍋で30分以上じっくりと煮込むのがコツ。
 おいしい香りが食欲を誘います。




     

 七草に井月さんは詠みます。

  鈴つけて猫も爪とげ薺の日  井月

 以下、この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、

 五節句の一、人日(じんじつ)は陰暦正月七日のこと。この日、七種粥を祝う。また、薺爪・七種爪(ななくさづめ)といって、正月七日、七種粥に用いる薺を浸した汁で爪をしめして切ると、邪気を払うという俗信があった。今日は薺の日だ。鈴つけて猫も爪とげと、猫に呼びかけた。「人の日や釜にこころの移る朝 井月」の句碑が、一九九四年富県、金鳳寺に建立された。
(薺・新年)

  人の日や釜に心の移る朝  井月

 前の句の竹入先生の評釈にも載っているこの句は、遡回その39で御紹介した駒ヶ根駅前の割烹食堂「水車」さんが製作されている「漂泊の俳人 井月俳句カレンダー」の1月2月に掲げられている句でもあります。
 
 この「人の日(人日)」ですが、古来中国では、正月の1日を鶏の日、2日を狗(犬)の日、3日を猪(豚)の日、4日を羊の日、5日を牛の日、6日を馬の日とし、それぞれの日にはその動物を殺さないようにしていた。そして、7日目を人の日(人日)とし、犯罪者に対する刑罰は行わないことにしていたとのことです。
 また、この日には7種類の野菜(七草)を入れた羹(あつもの)を食べる習慣があり、これが平安時代ころ日本に伝わったそうです。後に、人日を含む五節句が江戸幕府の公式行事となり、将軍以下の武士が七種粥を食べて人日の節句を祝うようになり、一般にも定着していったもののようです。
 五節句とは、人日(じんじつ)1月7日、上巳(じょうし)3月3日、端午(たんご)5月5日、七夕(しちせき)7月7日、重陽(ちょうよう)9月9日をいいます。
 また、秋の「七草」に対し、正月のものは「七種」と書くんだそうで、この七種も「ななくさ」と読み、一般には七日正月のものも七草と書くなど、混在した使われ方として残り、1月7日や小正月の15日に「七草粥」を食べる風習になったようです。
 疲れた胃腸をいたわり、不足しているビタミンを補うには最適なメニューといえますね。

 そして、井月さんは更にこうも詠みます

  嬉しさに袖なぬらしそ若菜摘  井月

 以下、この句の評釈についても、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、

 若菜摘は、七日正月の七種の材料を六日に摘む。早春の野に出で立って若菜を摘む嬉しさに、思わず折からの雪に袖を濡らしなさんな。
 万葉集一二四九歌「・・・菱摘むと我が染めし袖濡れにけるかも」等を踏まえた本歌取りの俳句。高冷地では実際野に出て芹薺等を摘むことは無理で、貯蔵の大根等を使うことが多い。井月は古典の風流に心遊ばせている。
 (若菜摘・新年)

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