林務課です。
先日、新しく植林した場所の下刈(下草を刈る作業)の作業状況を現地で調査してきました。
※下刈とは植栽した苗の成長をうながすための下草を刈る作業のことをいいます。
▲造林地に到着したところ。
調査した内容は、作業状況の目視確認と、区域を示す杭の位置の確認です。
今回はこのうち、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)を用いた杭の位置の確認について紹介します。
GNSSは本来軍事目的(ミサイルや航空機の精密誘導など)で開発された技術ですが、軍事以外にも次のようないろいろな分野で利用されているそうです。
■GNSSの利用分野
・カーナビゲーション
・個人ナビ(GNSS携帯)
・測量(基準点測量、地形測量;地形・地物の測定)
・時刻同期(電波時計の時間合わせ)
・情報化施工(土木工事などで重機との情報通信等を活用した施工)
・移動体無人運転
林務課では森林整備を行った場所の調査に、このGNSSを利用しています。
■今回の調査の手順
それでは、調査の手順を順番にみてみましょう。現地で撮った写真を順番に拡大しながらみていきますのでご覧ください。
▲調査の道具。左がGNSS受信機。
確認に使う道具はGNSS受信機とその情報を表示するスマートフォンです。
杭の位置にスイッチをONにしたGNSSの受信機を置きます。
10秒ほどで、設置したGNSSの受信機の位置がどこにあるかスマートフォンに示されます。
スマートフォンには、事前にこの作業場所の図面のデータをインストールしてあります。
スマートフォンの画面を見てみましょう。
▲GNSS受信機とスマートフォン。奥は下刈作業をした造林地。
スマートフォンには、設置した杭の位置と、位置を中心にした範囲(半径3mの円)が示されています。
▲スマートフォンに示された受信機の位置
受信機の位置(水色の小さな円)は、図面の杭の位置にほど近いことがわかります。
画面を拡大したところをご覧ください。
▲調査時の受信機の位置(水色の小さな円)は、事前に作成した図面の杭の位置(円の中心の位置)にほど近いことを確認。
この場所では3か所の杭を確認して図面との差は30~50センチに収まっていましたので、杭の位置が適切であることを確認しました。
■GNSSを用いた調査のメリットとデメリット
このやり方を行うメリットは、上空が開けていれば、大掛かりな道具(巻き尺)などを使用することなく短時間に確認を行うことができることです。
ただ、この方法には課題(デメリット)があります。
GNSS受信機は、上空約2万キロメートルにあるGNSS衛星の微弱な電波をキャッチしているので、近くに大きな樹木や尾根などがあると、電波が跳ね返る現象(マルチパスという現象)が発生します。
GNSS受信機が跳ね返った電波をキャッチしてしまうと、衛星と受信機の距離が違ってしまうので、誤差がおおきくなってしまします。
このようなGNSSという技術の原理や特徴を理解した上で、確認・調査時には注意をはらうことが必要になります。
この場所は立木が伐採され、上空が開かれていることを十分確認したうえで、受信機を使用しているので、もとの図面との差が30~50センチ以内に収まっているということが言えます。
■おわりに
今後も新しい技術を活用しながら、県民の皆様から信頼されるような森林整備の推進に取り組んでまいります。
最後までご覧いただきありがとうございました。
■参考文献(2022年11月21日アクセス)
・GNSSを使用した測量のいろいろ(国土地理院ホームページ)
https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi45009.html
・高精度衛星測位の適用範囲拡大のための技術(マルチパスの影響を軽減する手法)の適用指針・検証、及び開発プログラム(国土地理院ホームページ)
https://www.gsi.go.jp/eiseisokuchi/eiseisokuchi41033.html
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