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杭を残して悔いの残らない仕事を~酸性雨のモニタリング調査を実施しました~

長野県林業総合センター 指導部です。

昭和60年頃、欧州で降水の酸性化が問題となったことで、日本でも酸性雨による被害があるのでは話題になりました。そこで、平成2年から酸性雨のモニタリング調査が全国一斉に行われることとなり、本県でも実施しました。

酸性雨の影響があるかどうかの調査ですので、単に樹木が健全であるかに留まらず、降雨の採取や、土壌の採取など調査項目は盛りだくさん。
1か所の調査を行うだけでも時間がかかることから、当センターだけではとても対応ができないということで、現地機関で活躍する林業普及指導員に協力してもらっていました。

面積の大きな長野県なので、県下34カ所に調査地を設け、平成2年から5年間隔で15年間にわたって実施した「酸性雨モニタリング調査」。5年間隔で3回にわたる詳細な調査結果から、酸性雨などの環境汚染に起因するとみられる森林への影響は観察されなかったため、平成17年度を最後にこの調査は終了しました。

それから、15年。
酸性雨モニタリング調査と聞くと、「センターから頼まれて引き受けたら、何日も入り込んで大変な目に遭った」という年配者からの思い出話(恨み節)になろうかという時代。
そんな秋のある日、「森林が成熟することで、土壌がどのように変化するのかを調べている。この一環として、平成の初めごろに調査を行った酸性雨モニタリング調査の試験地のうち、南信州地域振興局管内の2か所で、もう一度調査をしたい。」という名古屋大学の谷川先生からのメールが届きました。

谷川先生によると、できれば早々に調査をしたいので現地をみたいとのこと。調査終了から15年以上が経過し、現地に行けるのかどうかすら不安な中、古い資料を引っ張り出して、谷川先生らといざ現地へ。

最初に出かけたのは、最終の調査が平成14年という試験地。
林道からはさほど離れていないはずであると、地図を頼りに車を止め、森の中をさまよいながら歩き回っていると、ペンキを付けた明瞭な印と、調査地点を示す杭を発見。
「あった!」と大声を出して、関係者を集めて、調査地の再確認。

16年前に調査を終えた時に、塗りなおしたペンキも、調査枠を示した杭も残っており、十分に調査が可能であることが確認できました。

調査を行うとしていた谷川先生も「ここまで残されているとは信じられない!」と驚きの声。これまでも各地で調査地の再測定を行ってきたとのことですが、調査地がどこだかわからないところも多く、10年~20年前の調査地を発掘するというのは、難易度が高い作業であるとのこと。
林業普及指導員が恨み節を語るほど大変だった調査ですが、丁寧な仕事をしておくと、ちゃんと未来に残る仕事ができるのだなあと実感。

これで気をよくして、次に平成16年に最後の調査を行った次の現場へ。
地図を見ると、集落の奥に入っていったところにある試験地のようですが、道からは離れているようで、どこが入り口になるのかわからない。
仕方がないので、近いと思われる場所に車を止めて歩き始めたら、山すそには獣害防止のフェンス。
フェンスの一角にあった山への入り口を見つけて中に入り、先ほどと同じように森をさまよう。道路から離れていたため、先ほどよりはさまよう時間は長かったものの、ペンキマークを確認。
こちらの方も、杭がしっかりと残り、立木に塗ったペンキも良く分かる形で残されていました。

15年以上の間、調査に訪れる人は居なかった試験地ですので、まさか2か所とも、きれいに保存されているとは思いませんでした。
同行した谷川先生からも「非常に素晴らしい調査地を残していただいたので、研究材料として貴重なので、ぜひ調査をしたい」と喜ばれました。
谷川先生の調査に際しては、改めて所有者さんの了解を得ていくことになりますので、調査もこれからです。
とはいえ、平成の初めに設定した試験地が、時代を超えても活用できる状態にあったということは、私たちにとってもうれしいことでした。

平成15年頃に調査を行っていた時には、まさか「15年以上先まで残しておこう」とは思っていなかったとは思いますが、丁寧な仕事をして、きちんとした杭を打っていたことで、まさに「悔いの残らない仕事」になったように思いました。
何十年もの時間をかけて育っていく森林を相手にする私たちですから、これからも「杭は残しても悔いの残らない仕事をし続けたい」
そんな思いを持ち続けたいと思います。

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