2016.03.30 [ 林業総合センター ]
ワイヤロープの安全性確認
林業総合センター 指導部です。
林業において様々な場面で使用されるワイヤロープは、その用途に応じて安全基準や規格が定められており、その加工方法にも基準があります。
このうち、上の写真にあるようなロープの先端に輪を作る「アイスプライス」や、下の写真に示した2本のワイヤをつなぐ「セミロングスプライス」などは、個人で手加工できます。
ちなみに、「スプライス」というのは、「継ぐ、重ね継ぐ」という言葉で、ワイヤ加工では一般的に用いられています。
林業総合センターでは、「林業架線作業主任技術者講習」等の際に、山林作業現場で活用できるワイヤロープの手加工を指導しています。安全性を確保するために、基準に適合する方法が示されていますが、金属ワイヤを手作業で加工するのはなかなか大変です。このため、ワイヤ加工に慣れていないと、加工した場所が不恰好になっていることなどがあります。
林業総合センターの講習では、教科書に基づいて実際の指導を行っていますが、規定の回数を正しく編みこんだとしても、見た目が悪いような加工を行った場合に適切な強度が確保されているかどうか不安になります。
林業総合センターにはワイヤの引っ張り強度を測ることが出来る試験機がないため、ちょっと遠いですが、この疑問を解決するため、こうした試験研究に積極的に取り組んでいる高知県の森林技術センターに協力頂き、引っ張り試験を行ってきました。
今回の試験では、熟練者によるきれいな編み込みと、正しく編み込まれているものの慣れていないために不恰好になっている編み込みを、3~5本ずつ引っ張って強度が保たれているかどうかを確認しました。
その結果、私たちが講習会で指導している方法でワイヤの手加工を行えば、必要とされる強度を確保できることを確認しました。
手加工では16mmまでのアイスプライスの場合は、ワイヤの破断荷重に対して80%以上の強度が必要とされています。今回の試験では現場でも使われることが多い9mmの新品ワイヤを使って、いくつかの方法で試験を行いましたが、必要な強度を下回ることはありませんでした。ただし、ワイヤを挿す回数が若干少ない場合には必要強度の下限値ぎりぎりであったため、丁寧な加工が大切であることがわかりました。
さらに現場の作業では、毎回新品のワイヤを使うわけではありません。今回は新品ワイヤでの実験でしたが、実際の作業ではある程度の力でワイヤを引っ張っており、繰り返し使用をしています。今後は、使用方法による強度変化についても検討していきたいと思っています。
ワイヤロープは、とても重くて大きな木材を運んでくれる優れた道具ですが、ひとたびワイヤが切れてしまうと重大な事故につながることがあります。
林業の安全作業を進める上でも、ワイヤの手加工を行うときは、手間を惜しまずに初心に帰って丁寧な仕事に心がけることが必要なのだと再認識しました。
今回の結果は、今後の研修に活かしていきます。
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