さて、井月さんの詠んだ「ほととぎす」は、
時鳥旅なれ衣脱ぐ日かな 井月
この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、
時鳥は、日本で夏を過ごす代表的な渡り鳥。時鳥が鳴いている。季節が巡って今年も夏になったか。旅を何年も続けてよれよれになった衣服を脱ごう、旅に一応の終わりを告げてこの伊那に留まる決心をした、という感慨は印象的だ。井月が伊那に来て数年、文久三年(一八六三)井月編の『越後獅子』巻末に載っている。
(時鳥・夏)
この句は、遡回その30の記事にも登場しました。
落ち栗のように【井月さんのこころ30】
更には、
信濃路や松魚(かつを)はみねど時鳥 井月
豆腐屋も酒屋も遠し時鳥 井月
時鳥酒だ四の五の言はさぬぞ 井月
後者の句についても、竹入弘元氏の評釈を引用させていただくと・・・、
時鳥が鳴いた、この喜び。なんてたって酒だ。あれこれ言わせないぞ、と大した勢い。「四の五の言う」は、なんのかのと文句を言う。
平安朝の昔、貴族は時鳥の初音を聞きたくて夜中起きている、真っ先に聞いたことを誇る等異常なまでに時鳥を珍重する様子を『枕草子』等は描くが、古来文人に人気の鳥だ。「初松魚酒に四の五は云はせぬぞ」は類想句。
(時鳥・夏)
今年は鰹が不漁だとか。「鰹のたたき」の値段も高いようです。
5月17日(土)まで伊那文化会館美術展示ホールで「郷土をささえた書画展8」(芝田会主催)が開催されています。
小坂芝田(こさかしでん)の南画を中心に伊那が生んだ三筆「池上秀畝」「中村不折」「小阪芝田」の作品など163点が入場無料で鑑賞できます。
小坂芝田は、中村不折の6歳下の従兄弟で、大正6年46歳の若さで6人の子を残し早世した南画家。一升酒を飲み干す酒豪であったようです。
伊那市の曹洞宗常圓寺に所蔵されている不折の「九華山」の書と芝田の「青緑楼閣」の画は、一対で地蔵菩薩の聖地をみごとに書き描いた双幅の大作です。
このほか池上秀畝の「牧童」と作者不詳の「おしどり」の二曲一双の屏風画が目に留まりました。白い牛に跨った童とオシドリでなくマガモと思われる水鳥とを描いた作品です。
前回その60で鴛鴦の句を紹介したときから気になっていた「おしどり」が、綺麗な色をしたカモ類を総じて指すのだろうということが類推できる作品なのでした。
さて、来週末のイベントの御紹介です。
25日(日)「第3回 初期中仙道 小野宿市」が開催されます。
このブログや記事に関するお問い合わせ窓口
上伊那地域振興局 総務管理課
TEL:0265-76-6800
FAX:0265-76-6804