井月さんのこころ シリーズ その61
「卯の花の匂う垣根にほととぎす早やも来鳴きて忍び音もらす夏は来ぬ」
卯の花は「うつぎ」の白い花。この唱歌にも唄われるように新緑の季節に夏の訪れを知らせる花です。
写真:恩徳寺境内で(南箕輪村沢尻)
新緑まぶしい野山では、蕨、こしあぶら、イタドリなどの山菜も最盛期を過ぎました。
これは、江戸時代前期の俳人山口素堂の句だそうで、「ほととぎす」はツバメやオオルリと同じ夏の渡り鳥です。
俳句を詠む場合、原則として季語を重ねてはいけないのだそうですが、この俳句には季語が三つも入っていますね。
ところで、前回その60に登場した川辺の鳥である「鷺」も「鵜」も季語としては夏なのだそうで、春日愚良子先生の「春の鵜」のように使う場合は良いようですが、「鷺」(夏)と「暮れ遅き」(春)を一つの句に入れるのは禁じ手だということのようです。
さて、新緑の季節に夏の訪れを知らせるこの「ほととぎす」、
武将の性格を比較した「ほととぎす」の有名な説話がありますね。
『甲子夜話(かっしやわ)』(東洋文庫・松浦静山著)の巻53によると、
「夜話のとき或人の云けるは、人の仮托に出る者ならんが、其人の情実に能く恊(かな)へりとなん」として、次のようにある。
郭公(ほととぎす)を贈り参せし人あり。されども鳴かざりければ、
なかぬなら殺してしまへ時鳥 織田右府
鳴かずともなかして見せふ杜鵑 豊太閤
なかぬなら鳴まで待よ郭公 大権現様
信長、秀吉、家康の性格を比較した有名な説話です。「時鳥」、「杜鵑」、「郭公」のいずれも「ほととぎす」と読みます。他に「不如帰」、「子規」などとも書きます。
正岡子規は21歳で喀血し「鳴いて血を吐く子規(ほととぎす)」と俳号を「子規」としたのだそうです。
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