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創業100年!国産ポール生産NO.1企業「株式会社シナノ」

国産スキー用ポールの100%が、ここ佐久地域で生産されています。その中でもトップシェアを誇るポールメーカー「株式会社シナノ」。2019年、ついに創業100周年を迎えました!100年の歳月で培った技術、取り組み、考えなどをたっぷりとお聞きします。

インタビュー&工場案内に応じてくださったのは、株式会社シナノ 柳澤光宏 代表取締役社長です。

▲株式会社シナノ 柳澤光宏 代表取締役社長にお話をお聞きします。

1.創業100周年を迎えた2019年

―本日はどうぞよろしくお願いします。
柳澤社長)よろしくお願いします。

―昨年創業100周年を迎えられましたが、何か記念に取り組まれたことはありますか?
柳澤社長)まず一つは、100周年の記念誌の作成ですね。当社の歩みがまとまった一冊となっており、関係者の皆さまにお配りしました。また、3月にスキー大会、5月には工場祭として、工場や駐車場を開放してイベントを開催しました。このイベントでは、ものづくり体験会やふるまいなどを行ったのですが、ありがたいことに予想を超える約850人もの地域の方々にお越しいただきました。大変好評だったので、このようなイベントを毎年開催できたらと考えています。8月には、当社の主力商品の一つである「杖」を佐久市に100本寄贈しました。これらは市内の病院に貸し出されるということで、地元の皆様にお使いいただけるのは嬉しいですね。

 その他にも、スキー用ポールの復刻版を100セット限定で作製しました。ちょうどスキーがブームを迎えた時代のもので、当時お使いいただいた皆様は大変懐かしいとおっしゃいますね。実は、当社に当時の製品が残っていなかったのです。SNSで呼びかけ、当時のポールをお持ちのお客様からお借りして、再現することができました。

▲スキー用ポール「INTRA(イントラ)」シリーズの復刻版。カラーも当時ならではの色味を再現しています。

2.現在に至るまで

―創業からこれまでのことについてお聞かせください。
柳澤社長)はい。ではいきなりですが、スキーが日本に伝わったのはいつかご存知ですか?

―・・・。教えてください!
柳澤社長)今からおよそ110年前、1911年に新潟の上越地方に日本で初めてスキーが伝わり、翌年の1912年に長野県に伝わったと言われています。当社は1919年に、「信濃スキー製作所」として創業しました。当時はスキー製品全般を取り扱っており、その後、スキーストックを主力製品としたメーカーとなりました。

▲指し示しているのは当時の竹製のスキーストック!お客様から寄贈していただいた貴重な品です。

 現在、当社は国内産スキーポールの40~45%のシェアを持っています。1990年代をピークにスキーの市場規模は1/10まで減少していますが、新たな市場への展開を積極的に行うことで、100周年を迎えることができました。

―スキーが日本に伝来した当初からスキー製品を製作されていたのですね!「新たな市場」とは具体的にどのようなものでしょうか?
柳澤社長)スキー用ポールで培った『にぎる技術』や『支える技術』を活かせるのではないかと考え、トレッキング用のポールや高齢者用の杖、ウォーキング用のポールなどの分野を展開しています。また、違う事業部としてFRP(※1)の加工をしており、様々なFRP製品の製作にも取り組んでいます。こうした基礎となる技術、そしてそれを活かした新たな取組による事業の多角化は、創業100年を歩む上でなくてはならない進化ですね。また、杖の市場は20年前の約4倍にまで拡大する中、杖は当社の主力分野となりました。ウォーキング用ポールも徐々にではありますが、成長を続けています。ウォーキング用ポールを購入された方の中には、杖の代わりとしてお使いいただいているケースもあります。近年福祉面での需要が伸びており、大変嬉しく思いますね。

 ただのモノづくりではなく、自分たちの商品を通して、「楽しみ」と「健康」を提供するのが我々の会社の使命だと思っていますので、社員にもこの考えを大事にするよう伝えています。

▲柳澤社長自ら、スキーストックを手に詳しく解説してくださいました。

―「杖」が主力分野になっているとのことですが、直営店も設けられたそうですね。その狙いや効果はいかがでしょう。
柳澤社長)「杖」というと、一般的な介護用品としてお店に並ぶことが多いですが、当社ブランドの杖は、もっとファッションの要素を加えたイメージでお客様に訴求したいと考えていました。そのため、百貨店などにも卸していますが、直営店を作ることでイメージを直接お客様にお伝えしたいと思い、東京の有楽町と吉祥寺に直営店「ステッキ工房シナノ」を開設しました。

 直営店は、お客様に直接会い、声をお聞きできることが大きなメリットです。来客されたお客様の意見は、データとして蓄積し、当社の商品開発に活かしています。これまで当社では、杖を購入される方の男女比を2:8ととらえていましたが、直営店独自のデータ収集により4:6という男女比が分かり、男性向けのラインナップを増やすなど直営店からの情報を製造の現場へ活用しています。

▲カラフルでデザイン性の高い杖がズラリ!服同様、ファッションの一部となりそうです。

 

3.これから目指す展開・ビジョン

―直営店ならではのメリットですね!中国やドイツなど、海外での展開もされていますが、海外市場へのお考えをお聞かせください。

柳澤社長)日本は、高齢化社会を迎え、杖をはじめとした市場が成熟していますが、いずれ、中国や東南アジアも同じような経過を辿ることでしょう。その前に「シナノ」ブランドを確立することが重要だと考えています。現在、中国では2022年の冬季五輪に向けてスキー場の開発が進められています。中国のスキー場は、日本式というより欧米圏の形式に近いですね。スキー場の施設内に、宿泊施設や大型のショッピングセンターが入っており、スキー場を中心とした一つのリゾート地が形成されています。中国ではすでに代理店契約を結ぶことができましたが、こうした新興市場動向についても、実際に現地で調査をしながら市場の展開・ブランドの確立を図っていきたいと思います。

―では最後に、今後の展開についてお聞かせください。
(※ここで、工場見学をさせていただきました!製作現場の写真はお見せできませんが、シナノさんの持つ技術についてもお話を伺うことができました。)

柳澤社長)ポール加工の技術には、「アルマイト処理」、「曲面への印刷」、「にぎる技術」があります。特に曲面に印刷する技術は、他の分野にも応用していきたいですね。これまでも、県内の不凍栓メーカーから発注を受けて外観パイプに印刷を施したことがありますが、こうした曲面への印刷技術は当社の強みですので、活用できるジャンルがないか模索中です。パイプへの曲面印刷のご依頼があればぜひお声掛けください

当社の曲面印刷技術は、スクリーン印刷インクジェット印刷に分けられます。スクリーン印刷では、版を何種類も重ねることで独特の奥行き感を出すことができ、平面的な印刷とは一線を画した高級感のある仕上がりが実現します。転写するタイプは、どうしても色の彩度が鈍くなってしまいますので、鮮やかでなめらかな仕上がりはこのスクリーン印刷の強みですね。

「北斗の拳」シリーズなどのポールは、当社が独自に開発したインクジェット装置により行っており、非常に細かいところまで印刷ができます。インクジェット印刷は、一本単位で印刷する「オンリーワン印刷」ができるため、例えば名前を入れるなど、オーダーメードで製作できるのがメリットです。世界に1つだけのMYポールとして、この事業も今後期待できます。

▲北斗の拳×シナノのコラボレーションポール!
キャラクターの細かい表情・色味も独自のインクジェット印刷技術により実現しました。

 

 また、杖やポールのグリップの金型を、金属型と3Dプリンタで作った樹脂型を組み合わせて行う方法を、伊那市の企業と連携して開発しました。これは、お客様の手の形をもとに、最適なオリジナルグリップを提案するもので、関東経済産業局の地域産業資源開発事業計画として認定を受けており、技術的には確立できています。こちらはお客様がその場ですぐ購入できるものではないため、今後、お客様が利用しやすい方法をさらに検討し、ビジネスとして確立していきたいと思います。

―柳澤社長、本日は貴重なお話をありがとうございました!
柳澤社長)ありがとうございました。

スキー用品から始まり、100年を迎えたシナノ。ポール製作の技術が、私たちの身近なところで、思わぬ形で登場しているかもしれません。培った技術を糧に、次なる100年に向けて歩み続けます。



企業情報

株式会社シナノ
住所 〒385-0022 長野県佐久市岩村田1104-1
電話 0267-67-3321
FAX 0267-67-3326
HP 【https://sinano.co.jp

(※1)
プルトレンの材料であるFRPは、強化材のガラス繊維と熱硬化性樹脂とを組み合わせた複合構造材で、強度、耐食性、電気絶縁性、軽量性などの点で、きわめて優れた特性を備えています。プルトレンは、この優れたFRPを当社独自の連続引抜成形法によって部材化したものです。他のプラスチックには得られない強度、耐腐食性、大きな引張り強さ、曲げ強さを実現+生産効率の高さでコスト優位性を発揮。あらゆる場所で活躍できる可能性を持つ部材です。((株)シナノHPより抜粋して引用)

 

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