2014.11.15 [ 自然・山・花 ]
晩秋の風と残菊に 【井月さんのこころ86】
史正忠(?)が菊譜に曰く、菊惟介烈高潔にして百草と其の盛衰を同じうせずと云々。……(中略)……姿態色香咸變ず実に仙家の翫弄不老延年の㚑草(れいそう)成。
異名:日精(じつせい)……隠君子(いんくんし)……隠逸花(いんいつくわ)。
前段の原典は、史氏菊譜(中国宋代 史正誌作)中の一節に、
菊性介烈高潔 不與百卉同其盛衰 必待霜降草木黃落而花始開 嶺南冬至始有微霜
また、隠君子(いんくんし)といえば、この句が思い浮かびますね。
菊作り菊見るときは陰の人 吉川英治
早咲きの菊に 【井月さんのこころ83】
https://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/7692.html
また、三国志の武将 魏の鐘会(しょうかい)は「菊の五美」を次のように謳っています。
菊花賦:鍾會賦以五美
謂圓華高懸 準天極也 純黃不雜 后土色也 早植晚發 君子德也
冒霜吐穎 象勁直也 杯中體輕 神仙食也
菊は、花円く高きにつき、色が黄色なのはそれぞれ天地をかたどり、早く植え晩(おそ)く咲くは君子の徳、霜を冒して香るは勁直、菊酒は神仙の食なり。
菊酒については、遡回その83「延年の薬」の句の評釈で竹入弘元先生の評釈に登場しました。
花札の絵柄に菊と酒盃がセットで描かれている札がありますね。これは「菊酒」を表現したもので、「桜に幔幕」の札とで「花見酒」、「月」の札とで「月見酒」と日本の行事にまつわる役を作る札とされています。
また、霜にもめげずに咲き続け香る菊を「勁直(けいちよく)」と表していますね。
ここで、好きな言葉の一つ「勁直」に辿り着きました。
古代中国の戦国時代に活躍した政治思想家である韓非子は、次のように述べています。
智術(ちじゅつ)の士、必ず遠く見て明察す。明察せずんば私を燭(てら)す能(あた)わず。能法(のうほう)の士、必ず強毅にして勁直なり。勁直ならずんば姦を矯むる能わず。人臣令に循(したが)ひて事に従い、法を案じて官を治むるは、重人(じゅうじん)と謂うに非ざるなり。重人なる者は、令を無にして擅(ほしいまま)に為し、法を欠きて以て私を利し、国を耗(そこな)ひて以て家に便し、力能く其の君を得る。此れ所為(いわゆる)重人なり。
智術の士は明察し、聴用(ちょうよう)せらるれば、且(まさ)に重人の陰情(いんじょう)を燭(てら)さんとす。能法の士は勁直にして、聴用せらるれば、且に重人の姦行(かんこう)を矯めんとす。故に智術能法の士用いらるれば、則ち貴重の臣必ず縄の外に在り。是れ智法の士と当塗(とうと)の人とは、両存すべからざるの仇なり。
現代語に訳すと
術を理解している智術の士は、必ず遠くまで見通して事実を明察する。事実を見抜くという明察ができなければ、不正な臣下の私利私欲を明らかにすることもできない。法を正しく実践できる能法の士は、必ず意思が強固で妥協を知らない一本気な強さがある。一本気の折れない強さがなければ、臣下の不正を改めることなどはできない。臣下の中で命令に従って職務に従事し、法を顧みて官職を務めているような人物は、重臣とまでは言えない。重臣という者は、命令を無視して自分の思い通りに振る舞い、法を無視することで私利私欲を肥やし、国益を損なって自分の家を豊かにし、それでいて君主の心を捕まえているものである。これを、重臣と呼んでいるのだ。
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