2014.11.15 [ 自然・山・花 ]
晩秋の風と残菊に 【井月さんのこころ86】
旧暦10月12日は、芭蕉翁の命日(翁の日)、時雨忌です。
翁の日、時雨忌については 2013年11月16日 翁の日に【井月さんのこころ35】
https://blog.nagano-ken.jp/kamiina/life/180.html
さて、菊は盛りを過ぎてもなお、霜の中で咲き続け、香っています。この様子を井月さんが詠んでいます。好きな句のひとつです。
香に誇る私はなし残り菊 井月
菊に入れ込むと菊に纏わる古今の様々な事象が気になり、少しく調べて集めてみることにしました。
先ずは、和漢朗詠集には、次のように詠われています。
燕知社日辞巣去 菊為重陽冒雨開 (秋日東郊作 皇甫冉)
燕は社日(しゃじつ)を知りて巣を辞し去る、菊は重陽のために雨を冒して開く。
(皇甫冉 こうほぜん(716~769年)、中国唐代の詩人)
霜蓬老鬢三分白 露菊新花一半黄 (九月八日酬皇甫十見贈 白居易)
霜蓬(そうほう)の老鬢(ろうびん)は三分(さんぶん)白し、露菊(ろきく)の新花は一半(いつぱん)黄なり。
(白居易 はくきょい(772~846年)、中国唐代の詩人)
先ほどの芭蕉翁の『芭蕉を移す詞』にも登場した「菊は東雛に栄え」の原典は、
采菊東籬下 悠然見南山 (菊は東雛の下にとり、悠然として南山を見る。 陶淵明)
また、江戸後期の俳諧歳時記である『改正月令博物筌(かいせいげつれいはくぶつせん)』(鳥飼洞斎撰)の十月部 時令草木「残菊」には次のように書かれています。
九月咲残りたる菊なり
歌 夫木 貫之
秋さける菊にはあれど神無月しぐれる花の色は染ける 紀貫之
「残菊」は重陽の節句(陰暦九月九日)を過ぎた菊を云い、和歌によく詠まれた萎れ始めた頃の菊。花びらを紅もしくは紫へと変えてゆく白菊の花のことです。純白の菊を愛した雅人は、盛りを過ぎて色を変えた花をも賞美して歌に詠んだのです。
同じく『改正月令博物筌(かいせいげつれいはくぶつせん)』九月部 時令「菊」には次のように書かれています。
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