2015.08.15 [ 歴史・祭・暮らし ]
戦後七十年の夏に 【井月さんのこころ127】
井月さんのこころ シリーズ その127
二十四節気の「立秋(8月8日)」は過ぎましたが、なかなか暑さも収まりませんし、まだまだご紹介しておきたい井月さんの夏の句がいっぱいありますので、夏シリーズを続けます。
今週の一枚は、伊那市ふるさと大使でガラス工芸作家 江副行昭さんの「熔壌(ようじょう)ガラス」の作品です。上伊那地方事務所長室に飾られている「お宝」のひとつです。底面に「‘90.11/14 江副」 と刻まれていますので、平成2年の作品と思われます。
江副行昭さんは、昭和57年に高遠町(現:伊那市高遠町)に工房を構え、平成5年から活動の拠点を長谷村(現:伊那市長谷)のアートビレッジ信州へ移し創作活動を続けておられます。
「熔壌ガラス」は、加えられた土の中の鉱物が1500度前後の高温で溶けることによりガラスに独特の色が付き、見る角度によってさまざまな色合いが生じ、写真のような涼しげな作品に仕上がるのだそうです。
江副行昭さんの「熔壌ガラス」は、伊那市へふるさと納税(百万円以上)をした寄附者への特典としてももらえるそうです。
さて、七十二候の「涼風至(すずかぜいたる)」は8月7日頃、涼しい風が吹き始める頃です。まだまだ暑いからこそ、ふとした瞬間に涼を感じます。井月さんが詠んでいます。
よき風の生れどころや釣荵(つりしのぶ) 井月
以下、この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、
しのぶ(荵)は、シダ植物シノブ科。葉は三角形に近く、羽状に分裂する。その葉のついた根茎を絡み合わせて観賞用に軒に吊るし、風鈴を下げ、水をやる。そこから涼しい風が生れる、という。見た感じも涼しい。
ウラボシ科の軒しのぶ(忍草)と混同しがちだが、屋根にも生える軒しのぶは別種。葉が蘭に似た、長さ二〇cmほどの線形。
(荵・夏)
涼しさを感じ始める夏の夕暮れには、この歌です。
「♪ 浴衣(ゆかた)の君は 尾花(すすき)の簪(かんざし) 熱燗徳利の首つまんで もう一杯いかがなんて 妙に色っぽいね……… ♪」 と、そうです、吉田拓郎の「旅の宿」が思い浮かびます。
岡本おさみ作詞の1番の歌詞(原作)は、
浴衣のきみは尾花の簪 熱燗徳利の首つまんで
もういっぱいいかがなんて みょうに色っぽいね
ぼくはぼくで趺坐をかいて きみの頬と耳はまっかっか
ああ風流だなんて ひとつ俳句でもひねって
今にして思えば俳句をひねるなんて考えもしなかった高校生の頃、昭和47年(1972年)戦後27年目のヒット曲ですが………
あれは夏浴衣の帯を解きし宿 青巒
井月さんの今週のもう一句も、浴衣です。
熱燗は来週、すすき(尾花)は再来週の井月さんのこころにしたいと思います。
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