い~な 上伊那 2つのアルプスと天竜川からなる伊那谷の北部に位置し、雄大な自然に囲まれた上伊那地域。 この地域の自然、食、歴史や地域のがんばる人々など、私たち職員が見つけ、感じた上伊那の魅力と地域の活力を発信します。

い~な 上伊那

2つのアルプスと天竜川からなる伊那谷の北部に位置し、雄大な自然に囲まれた上伊那地域。 この地域の自然、食、歴史や地域のがんばる人々など、私たち職員が見つけ、感じた上伊那の魅力と地域の活力を発信します。

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雲水の如くに 【井月さんのこころ110】

井月さんのこころ シリーズ その110

 自宅の庭先に薄紫のカタクリの花が咲き始めました。

カタクリの花001

 日本の草花で一番多い花の色は「白色」。次いで「黄色」、「青~紫色」の順なのだそうですが、春にはレンギョウ、水仙、たんぽぽ(鼓草)、菜の花などの「黄色」が多いように感じられます。黄色や黄金色には、虫などの生き物を惹き付ける力があります。

 現在、県信濃美術館で行われている「善光寺御開帳記念『“いのり”のかたち』-信濃の仏像と国宝土偶『仮面の女神』『縄文のビーナス』-」(長野県、信濃美術館、信濃毎日新聞社主催)に、上伊那から辰野町上島普門院の『十一面観音菩薩立像』と伊那市仲仙寺の『多聞天立像・持国天立像』が展示されていることについては、前回その109で記しましたが、もう一体、伊那市美篶笠原薬師堂の『薬師如来坐像』が出展されています。この坐像は、鎌倉末~南北朝時代の京の大仏師法印性慶の作で、伊那市の文化財に指定されているものです。こちら(公益財団法人 八十二文化財団HP)から検索できます。)

 北村皆雄監督の井月さん映画『ほかいびと』に登場した数珠回しには、この薬師堂で撮影されたシーンが登場します。地元の笠原山梨集落の住民の皆さん方がエキストラで協力し、薬師如来の前で輪になり、南無阿弥陀仏を唱えながら大きな数珠を回す様子が映像に収められています。

 このシーンは、科学映像を無料配信しているNPO法人科学映像館にも「上伊那の祭りと行事」映像30選として、デジタル化され収録されています。この映像30選は、上伊那広域連合の企画により、この土地に生き、地域で育まれた民俗文化を、伊那谷の未来への文化遺産として残したいという強い思いから北村皆雄監督さんらの手によって5年かけて制作されました。

 このうち「上伊那の祭りと行事-総集編-」は、30選全ての映像がおよそ一時間にダイジェストされており、1月から12月までの一年の行事のあらましが理解できるようになっています。是非ご覧ください。15分45秒辺りに伊那市美篶笠原薬師堂の『薬師如来坐像』と数珠回しのシーンが登場します。

http://www.kagakueizo.org/create/visualfolklore/513/

 残念ながら、長野県職員の皆さんの公用パソコンからは、動画へのアクセスが制限されており内容を見ることが出来ません。御自宅のパソコン等からご覧ください。

 「上伊那の祭りと行事30選」は、DVD・解説書・資料集としてまとめられ、井上井月顕彰会から発売されております。

http://blog.livedoor.jp/inoueseigetsu/archives/51871327.html

 今年1月にお亡くなりになられた井上井月顕彰会の会長であった堀内功さんは、笠原山梨(月見里)の御出身で御自宅の前に、井月さんや山頭火の句碑などを建てられました。こちら(遡回その27)

2013年9月23日 仲秋に月眺める頃【井月さんのこころ27】

https://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/237.html

 このブログ「井月さんのこころ」シリーズを書き始めるきっかけとなったのは、平成25年1月26日開催の「かみいな魅力発信シンポジウム」でした。映画「ほかいびと~伊那の井月~」の北村皆雄監督さんは、このたび井上井月顕彰会の新たな会長に就任されました。

 井上井月顕彰会会長に就任された北村皆雄さんが書いた井月本、「俳人井月――幕末維新 風狂に死す」が、岩波現代全書から出版されています。

http://blog.livedoor.jp/inoueseigetsu/archives/51957991.html

北村監督井月本

 井月さんは、伊那谷の各地を漂泊しながら俳句を詠んでいますが、雅号(俳号)は、「柳の家井月」「柳廼家井月」などを名乗っており、時には「狂言道人」「狂言寺井月」「雲水井月」「行脚井月」などの署名も残しています。

 伊那谷北部方面の足跡は少ない井月さんですが、この時節に当時の伊那富村宮木宿(現・辰野町宮木)の浄土宗泉水山長久寺を訪ねて詠んだ句があります。

   花に客しらで碁をうつ一間かな  井月

 この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、

 花の時期語り合おうと訪ねてきた客に気づかず、主は座敷で碁を打っている、という。詞書によると、俳諧でも有名な宮木宿長久寺の僧侶を訪ねると、飯炊き女が、留守だと言った取り合わなかったが、座敷に囲碁の音がしたので、一句を残して去った、という。

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