い~な 上伊那 2つのアルプスと天竜川からなる伊那谷の北部に位置し、雄大な自然に囲まれた上伊那地域。 この地域の自然、食、歴史や地域のがんばる人々など、私たち職員が見つけ、感じた上伊那の魅力と地域の活力を発信します。

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もらい風呂に蛙なく頃 【井月さんのこころ114】

井月さんのこころ シリーズ その114

 今週の一枚は、「つばめ」です。

 燕が代掻きの済んだ水田から土を運んで巣作りをし、子育ての準備を始めました。

つばめ001 

 今週11日(月)朝は、氷点下近くまで冷え込んで遅霜。原因は、季節はずれの台風の襲来で北から寒気が入り込んだためのようです。5月2日(土)が「八十八夜」でしたから、それを過ぎて遅霜が到来すると、かなり慌てます。露地へ定植を済ませた西瓜(すいか)や南瓜(かぼちゃ)の苗には、植木鉢やバケツを被せ、芽が出揃ったジャガイモには寒冷紗を掛けて、何とか遣り過しました。

 台風6号も大雨・洪水注意報が出されて心配しましたが、管内には大きな被害もなく通り過ぎて、農作物には恵みの雨になりました。

 ビニルトンネル メロン苗 西瓜苗

  写真 : ビニールトンネル(メロン、西瓜)  メロン苗(トンネル内)  西瓜苗(露地マルチ)

 暦では、6日が立夏で、それを過ぎていますが、今年の旧暦三月(弥生)の晦日は、17日(日)になります。水田には水が入って、代掻きが行われ、田植えも進んでいます。

 井月さんが詠んだ「三月晦日」です。

   呼び水の工夫も出来て弥生尽   井月

 夕方になると田圃のほうから蛙の声が賑やかに聞こえてきます。

   蛙なく夜の浅みやもらひ風呂   井月

 この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、

 春になって田に水が張られると待っていたように蛙が鳴き立てる。もううるさいほど。今は大概の家に風呂があるが、昔は近所親戚で交互に沸かし、もらい風呂をした。外に据えた風呂桶。この時期は日が永くなっていつまでも暮れない。暮れてもなにか明るい。

 この句はかつての農村の雰囲気をよく伝えている。

  (蛙・春)

 昭和30年代、祖母に連れられて近所に「もらい風呂」をした遠い記憶がありますが、どこの家でも外から薪で炊く風呂でした。銭湯も当時の小野村には2軒くらいあって、大きな浴槽で泳ぐのが楽しみでした。そういえば、伊那市内最後の銭湯「菊の湯」さんが営業の幕を閉じたのは、一昨年の暮れのことでしたね。

トノサマガエル01 (167x167)

 2014.01.10 菊の湯様 長い間ありがとうございました!

 蛙の子は「おたまじゃくし」。「日本で最も美しい村」連合に加盟している中川村の飯沼地区の棚田では、酒米「美山錦」を栽培して農村景観を保全しており、この中川村に唯一ある酒蔵の米澤酒造さんが、この酒米を使って「おたまじゃくし」を醸造しています。

 2013.04.22 中川村棚田復興プロジェクトによる酒造り

 

  昨年春、米澤酒造(株)の経営を『かんてんぱぱ』の伊那食品工業(株)が引き継ぐこととなり、NPO法人「日本で最も美しい村」連合の副会長でもある伊那食品工業(株)の塚越寛会長さんは、『今錦』の酒蔵を存続させ、新たに酒造見学工場等の整備により観光資源としても活用していく方針を示されました。高品質で安定した酒造りを目指して昨年10月から醸造工場の建替え工事が進められており、行政としても「企業立地促進法」等による支援をしてまいります。

 この度、塚越寛会長さんの『リストラなしの年輪経営』の著書が、首相官邸(国際広報室)が日本の魅力を海外に発信するために行っている書籍の翻訳出版事業で、今年度の5冊のうち一冊に選ばれたとのことです。

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