2014.06.21 [ 食・農・旅 ]
縒りが戻るように【井月さんのこころ66】
井月さんは、
跳ねたまま反(そり)の戻らぬ小鯵かな 井月
とも詠んでいます。
この句の評釈についても、竹入弘元先生の評釈を引用させていただくと・・・、
鯵は、鯖・鰯等と共に昔から親しまれてきた大衆魚。黒潮に乗って回遊し、産卵のため沿岸に近づく夏秋が漁期。一本釣りもあるが、ここは網漁であろう。掬い上げられた小鯵は跳ねて身を反らせたまま息絶えている。そこを的確にとらえたこの把握が非凡。
(鯵・夏)
鯵の干物は、田舎暮らしでも比較的手に入りやすいのですが、やはり烏賊や蛸は海に近い本場ものがおいしいですね。真空パックですが、お土産は発砲スチロールの箱に氷を入れてもらいました。
紀の松島で、鶴島と筆島の狭い水路を通って一句。
紀の国や鶴島にも鳴けほととぎす 青巒
写真:紀の松島(洞窟がある大きい島が鶴島で、その右が筆島。船がその間を抜けて熊野灘に出てから朝日に照らされた紀の松島を撮りました。)

さて、もう一つの紀州名産は、「南高梅」ですね。
その謂れはというと、昭和30年代に和歌山県立南部(みなべ)高校園芸科の生徒達が梅優良母樹の調査研究に協力して、最優良品種に選ばれた「高田梅」(明治時代に高田貞楠(たかださだぐす)さんという方が育種した品種)に同校の竹中勝太郎先生が「南高梅(なんこううめ)」と命名したのだそうです。
「高田梅(たかだうめ)」と「南部(みなべ)高校」の名をとり命名されたこの「南高梅(なんこううめ)」は、樹勢、結実性、果実形質に優れ、昭和40年に農林種苗登録され、梅干にすると果肉が厚く、皮が薄い最上級品で、いまや全国ブランドになりました。
梅干は、熊野速玉神社の境内で、お土産に薄塩のものを買ってきました。果実も買ってきましたが、こちらは梅干にすると手間がかかるので、梅酒にでもしていただこうと思います。
ところで、井月さんが詠んでいる「梅の実」は、
青梅や筒井づつなるその昔 井月
伊勢物語 二十三段
むかし、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとにいでてあそびけるを、おとなになりければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得めと思ふ。女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども聞かでなむありける。さて、この隣の男のもとよりかくなむ。
筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに
女、返し、
くらべこし ふりわけ髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき
などいひいひて、つひに本意のごとくあひにけり。
さて年ごろふるほどに、女、親なくたよりなくなるままに、もろともにいふかひなくてあらむやはとて、河内の国高安の郡に行き通ふ所いできにけり。されけれど、このもとの女、あしと思へるけしきもなくて、いだしやりければ、男、こと心ありてかかるにやあらむと思ひ疑ひて、前栽の中に隠れゐて、河内へいぬる顔にて見れば、この女、いとようけさうじて、うちながめて、
風吹けば 沖つしら浪 たつた山 よはにや君が ひとりこゆらむ
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