こんにちは、商工観光課のサマーです。
江戸五街道の一つである「中山道」は江戸・日本橋から京都までの間に69の宿場があり、そのうち信濃には26の宿場がありました。江戸からの道中は、群馬県の坂本宿から碓氷峠を越えて、軽井沢宿、沓掛宿、追分宿、小田井宿、岩村田宿、塩名田宿、八幡宿、望月宿、茂田井間の宿、芦田宿、長久保宿、和田宿を通り和田峠を越えて下諏訪宿へ下りが続きます。東信州にはこれら11の宿場と1つの間(あい)の宿がありました。
東信州地域の1市4町(佐久市、軽井沢町、御代田町、立科町、長和町)の行政や商工観光団体でつくる東信州中山道連絡協議会では、東信州中山道の観光促進に向けて様々な取組を行っています。2022年は中山道や街道観光に携わる講師や地元宿場の方々をお呼びし、地域の魅力の一つとして次世代への継承を討論する「信州中山道サミット」を開催しました。
ホームページではアーカイブを配信しています。当日参加できなかった方はぜひこちらもご覧ください。
第1部基調講演
朝日大学客員教授、東海道町民生活歴史館館長の志田 威先生の講演が行われました。
東海道を中心に長年街道研究を行ってきた志田先生によると、街道観光の参加者は高齢者中心で若年層の関心が低いのが現状。さらに、街道伝承に歪みが出始めており、解説に誤りが増加しているそうです。例えば、宿駅で乗り継ぐ馬、伝馬(てんま)の管理場で人や荷物の継立業務を行っていた施設「問屋場」は何と読むでしょうか?
正解は「といやば」。古文書や行灯等には「といや」「といやば」と仮名の記録が残されているものの、近年「とんやば」と誤って記された資料も増えているそうです。こうした歪んだ街道伝承を防ぎ、正確に伝承していくためにも、教育や観光視点の取組を増やし、若者に興味を持ってもらうことが重要とお話いただきました。
また、東信州中山道の見どころの一つが、本陣、問屋場、重要文化財など観光資源が多く現存していることです。県内で本陣が一棟そのまま残っているのは7宿あり、そのうち5つは東信州※にあります。東海道と比較しても往時を伝える資源が多く残っており、散策も楽しめる環境です。首都圏からのアクセスが良く、過ごしやすい気候で長期滞在型観光にも最適とご提案いただき、街道観光スポットとしての潜在的な魅力を再認識できました。
※本陣は武家や公家など当時身分が高かった人たちのための宿泊所。東信州には小田井宿、塩名田宿、芦田宿、長久保宿、和田宿の5つ
が現存しています。特に芦田、長久保、和田宿は連続する宿であり、東信州中山道観光の見どころになっています。
第2部パネルディスカッション
東信州で中山道に携わるパネリストにより「中山道を活かした観光振興」をテーマに討論が行われました。
パネリスト:
中山道69次資料館 館長 岸本 豊さん(軽井沢町)
軽井沢観光ガイドの会 会長 深町 基さん(軽井沢町)
佐久市歴史の道案内人の会 会長 嶋津 正喜さん(佐久市)
中山道二十六宿語り部 荻原 昌介さん(立科町)
芦田宿本陣 当主 土屋 省吾さん(立科町)
長和の里歴史館 学芸員 勝見 譲さん(長和町)
ファシリテーター:
軽井沢トラベル&コンサルティング 河野 岳さん(軽井沢町)
岸本館長によると、地理的な特徴として、東信州中山道のエリアは中山道で唯一火山地形の上を通っているそうです。また、第1部で志田先生からもお話がありましたが、当時の遺構が現存している地域でもあります。中山道に現存する一里塚(※1)14個のうち、東信州には7つ残っています。長野県内は一里塚が残されていない場所でも、代わりに標識や石碑が残されており、何もない場所は2か所だけだそう。また、双体道祖神(※2)は50箇所ありますが、半分は信濃にあります。お話を聞くと、一里塚や道祖神を探しながら中山道を歩いてみたくなります。
※1 昔の距離の単位である一里(約4㎞)毎に目印として造られた塚のこと。マイルポストなどと同様。目安として1時間に一里歩くと言われていたそう。
※2 男女が対になっている道祖神。子孫繫栄や村の繁栄を願って建てられたもの。
また、中山道を活かした観光振興のため、後継者育成や若者への発信方法を検討しました。
軽井沢観光ガイドの会深町さんによると、2022年に軽井沢フォトガイドの会が発足し、県内外の写真愛好家を招へいしてフォトコンテストを行っています。フォトガイドには若い人や英語が堪能な人が多く、写真とともに歴史を知ってもらい観光ガイド育成にもつなげようと取り組んでいます。
中山道二十六宿語り部の荻原さんは、解説だけでは難しくなってしまうので、当時の食も楽しんでもらおうと和宮(かずのみや)御膳をつけたツアーを実施。大変好評だったそうです。また、長和の里歴史館の勝見さんも、峠の力餅復活を目指して試作品を開発中。2023年度の商品化を目指しています。
歴史だけではなく、食、写真、体験を組み合わせて若い世代に発信していきたいと活発な議論がなされました。志田先生からは、「1つの宿場だけでなく周辺に視野を広げると様々な魅力が見えてくる。現在の遺産を維持しながらどう発信するかが重要」というお話がありました。
中山道を守り育ててきた様々な立場の方が一堂に会する貴重な機会になりました。改めて江戸時代の主要街道であった歴史に思いを馳せて、中山道を歩いてみたいと思います。
東信州中山道では、各宿場や周辺のガイドが行われています。中山道の歴史が数多く残る東信州エリアを案内人のガイドとともにぜひお楽しみください。
佐久地域振興局商工観光課では「中山道(茂田井間の宿)」ポストカードを配布しています。
中山道69次資料館
※冬期(12~3月)休館
住所:長野県北佐久郡軽井沢町追分120
TEL:0267-45-3353(資料館)
HP:https://nakasendo69.sakura.ne.jp/index.html
軽井沢観光ガイドの会
HP:https://karuizawa-kankokyokai.jp/knowledge/2562/
佐久市歴史の道案内人の会
HP:http://www7.plala.or.jp/toshin-sinano/2018rekishimichi/index-rekishimichi.html
芦田宿 本陣
HP:https://shirakabakogen.jp/archives/1783
長和の里歴史館
HP:https://nakasendo.nagawa.ne.jp/
中山道浪漫の旅
中山道69次資料館・岸本館長が講師を務めた中山道の歴史を伝えるイベント。2021年7月20日開催、主催はファシリテーターを務めた軽井沢トラベル&コンサルティング河野さん。
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