2016.12.27 [ 長野地域の【観光】 ]
最先端よりも、最前線を 有限会社 ケー・アンド・エフ コンピュータサービス(企業インタビュー⑤)
こんにちは!
長野地方事務所商工観光課のKです。
さて、長野県では「信州いいね!企業インタビュー」と題し、県内で特徴的な取り組みをされている事業者さんにお話を伺い、その内容をブログに掲載することで、起業や経営のノウハウをみなさまに発信しています。
いつもは、起業して数年以内の事業者さんを訪問することの多いこのインタビューですが、今回お話をお聞きしたのは起業して22年、すでにたくさんの実績をつくってきた有限会社 ケー・アンド・エフ コンピュータサービスの代表 黒崎 嘉美(くろさき よしみ)さんです。
一般家庭向けパソコンやインターネットの黎明期から、スマートフォンの登場した現在に至るまで、様々なコンテンツを生み出してきた黒崎さんのお話からは、確かな経験の積み重ねと、お仕事に対する情熱が伝わってきました。
-今日はよろしくお願いします。まずは、会社のことを紹介していただけますか?
はい。当社は平成6年(1994年)の9月に設立しました。現在の事業は、ソフトウェアの受託開発が中心ですが、その内容はホームページの制作と、ホームページを裏側で動かすプログラムソフトの制作、そして特定派遣の3つに分類できます。
-黒崎さんは、20年前に起業するまではどんなお仕事を?
写植会社の中の新規開拓部門で働いていました。そこで何をしていたかというと、よく大きな駅には、外国人向けに道案内をしてくれる端末や、案内板がありますよね。あれを30年前に作ろうとしていた社長さんがいらしてその部門を担当していました。ハードディスクが40MBだった時代ですね。私自身も、それまではパソコンに触った経験がありませんでした。
-そうだったんですか!驚きです。そこから、どういう経緯でこの会社を設立するに至ったのですか?
その部門はある程度の数字を作ったのですが、残念ながら、会社としてはその事業をストップするということになりました。少々、時代を先取りしすぎた部分はあったかもしれません。
そこで、既に集めていた5名のスタッフと、取り掛かる予定だった仕事と一緒に、自分で新しい会社をつくることにしました。その際には写植会社様にもご理解をいただきまして、会社を立ち上げるまでトラブルもなく起業できました。
-そんな経緯があったんですね。当時、苦労したことはありますか?
当時は、自治体などが起業をサポートしてくれる制度はあまりなかったと思います。今も昔も、創業者がお金で苦労するのは変わりません。私もすぐに資金が底をつきました。現在のような制度があったら、もう少し楽だったかもしれません。
他には当時、経営を安定させるために、道路の電光掲示板に表示するイラストをつくる仕事を、毎月1000枚ほど請け負っていました。ところが委託元の会社様が倒産してしまいまして。当社は設立してまだ2,3年だったので、その仕事が無くなったときはすごく焦りましたね。
-会社として不安定な時期に、そんな大変なことがあったんですね。そこで失った利益は、どうやって穴埋めをしたのですか?
穴を埋めることはできませんね。でも、その少し前にたまたま金融機関様の勧めで倒産防止保険に加入していたので、そこでお金を借りてなんとか乗り切ることができました。
-設立当時のスタッフの方達は、みなさんコンピュータのスキルを持った方だったのですか?
最初の頃は、そういうスキルも必要ありませんでした。何しろ、20年以上前ですからね。後から覚えていけばいいと思っていました。その頃は当社がプログラミングをすることはほとんど無く、既に組まれているプログラムを組み合わせて使って、何かの仕組みをつくる仕事が多かったことも、専門的なスキルが必要なかった理由の一つですね。
-お仕事をしていて、どんなときに喜びを感じますか?
当社の場合、例えば規模の大きいホームページを受ける時は広告代理店様などからのご依頼をいただくケースも多いのですが、エンドユーザ様と直接お話をする機会は多くはありません。でも、エンドユーザ様が満足してくれたり、評判が良かったりすれば代理店様の反応を通して私たちにもそれが伝わってきます。両方に喜んでもらえるものがつくれたときは、私たちも達成感や喜びを感じますね。
-黒崎さんが、お仕事をするうえで大切にしていることは何でしょうか?
まずひとつは、会社を始めた当時から、自分たちは下請けで、大きい規模の会社ではないことも分かっていましたから、「最先端よりも、最前線」というのをキーワードにしています。具体的に言うと、どんな技術でも最初に、多額の予算を投じて高度なことをやる企業さんがいるんです。それから少し時間が経過すると、コストが落ちて我々のような会社も手が出せるようになります。だから、資金力のある会社のように他社の一歩二歩先を行くことはできなくても、半歩先を行くことを目指しています。少しずつ知識を集めながら、チャンスを活かせるように準備するというのが当社のスタンスです。
もうひとつは、「早く行きたいなら一人で行け。遠くへ行きたいならみんなで行け」という言葉です。アフリカの古いことわざなのですが、アメリカの副大統領を務めたアル・ゴアさんが使ったことでも注目された言葉ですね。もっとお金が欲しい、もっと進んだことをやりたいという人はこの業界にもいますが、この会社は一人での行動を是としてはいません。みんなで協力して取り組みながら、企業としてより遠くへ行こうという考え方をしています。
-近年、スマートデバイスが登場したことで、お仕事に何か変化はありましたか?
うーん・・・。残念ながら、劇的に変化したということはありませんね。ただ、将来的に自分たちの仕事が無くなっていく可能性もあるな、ということは感じています。
-えっ、スマートフォン関連の仕事が増えるのかと思ったのですが、仕事が無くなるのですか?
現時点では杞憂かなとも思いますが、パソコンからどんどんデバイスが小型化して、機器も高度になっていきます。そうすると、もっと簡単に色々なものがつくれるようになって、人間の仕事は少なくなっていくと思うんです。だから、新しいデバイスが登場したときには注意するようにしています。
今のところ当社としては、パソコン向けのホームページを作っていたところに、新たにスマートフォン向けのホームページとアプリというレイヤー(層)が加わったことで仕事が増えた部分はあります。でも、それが少し違う方向に転がってしまうと、自分たちの仕事が無くなっていくことも十分にありうるということです。
-なるほど。先のことにも目を向けているんですね。ではここで、最近開発に携わったスマートフォンのアプリケーションを紹介してもらえますか?
はい。「ゲレロク」ですね。こちらは株式会社TOSYS様が企画・運営するサービスで、ゲレンデに設置されたカメラと自分のスマホアプリが連動して自分の滑りを撮影し、その場で確認できるというシステムです。
-自分がスキーをしている様子を、撮影できるということですよね。どうやって撮影しているんですか?
まず、スキー場のライブカメラに、カメラの振り方のパターンを登録しておきます。そしてスキーヤーがスマホアプリを起動すると、カメラがそのGPS情報をキャッチして、撮影が可能になるという仕組みです。
そもそも株式会社TOSYS様は、電気設備の工事などをされている会社なのですが、ライブカメラを設置するお仕事もなさっています。そんな中、熱心なスキーヤーでもある某社員さんから、スキー場に設置したライブカメラを、何か他のことにも活用できないかというアイディアが出てきまして。そういう意見はすごく貴重ですよね。「ゲレロク」には動画のランキングのページもあって、既にヘビーユーザーもいらっしゃると聞いています。
-自分でスキーをする人だからこそ、生まれたアイディアですね。私もこの冬、ぜひ使わせてもらいます!では次に、会社としての今後の展望を聞かせてもらえますか?
技術的なことでは、IoTに代表されるように、色々なものを融合させていく流れが業界にあります。当社には多種多様な技術を持った人材がいますから、彼らがチームを組んで対処できるような仕事は得意分野です。“融合”の流れに、うまく乗っていきたいですね。あとは、社員各々がキャリアアップできるよう、年間給与の1%をセミナーや研修への参加に充てましょうという取り組みを始めています。今すぐには時代が追い付かないような技術が、後々脚光を浴びることもありますから。気になる技術はどんどん吸収してもらいたいと考えています。
-最後に、これから起業する方へのアドバイスをお願いします!
先ほども述べたように、私たちが会社をつくった時と比べると、現在は起業を支援する制度が充実していると思います。それらをうまく活用してほしいですね。
-20年以上のキャリアがあるからこそのアドバイスですね。今日はありがとうございました!
インタビューは以上です。
当初は5人でスタートし、だんだんと仲間が増えていったというケー・アンド・エフ コンピュータサービス。「遠くへ行きたいならみんなで行け」という言葉のとおり、社員のみなさんが仲間のような和やかな雰囲気の中、協力してお仕事をしている姿が印象的でした。そして黒崎さんのお話を聞いて、今後さらにワクワクするようなコンテンツが彼らの手で生み出されることを確信しました。私も一人のユーザーとして、その日を楽しみにしたいと思います。
(長野地方事務所 商工観光課 K)
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