2020.07.07 [ 林務課 ]
里山での活動を知る。前編 その②
(「里山での活動を知る。前編 その①」から続く)
続いて訪れたのが、「国営アルプスあづみの公園 里山文化ゾーン」です。
こちらの詳しい内容については、HPからご確認下さい。
URL: http://www.azumino-koen.jp/horigane_hotaka/map/satoyama/index.html(外部サイト)
ここでは、天蚕農家の体験として、やまこの学校という活動が行われています。
詳しくはこちら:http://yamakonogakko.web.fc2.com/
天蚕とは・・・飼育用に品種改良された蚕(かいこ)の野生種の天蚕(ヤママユガ)で、餌も桑の葉でなく、クヌギなど里山の木の葉を食べます。成虫は、蚕蛾(カイコガ)と違い、飛ぶ事もできます。天蚕が紡ぐ天蚕糸は、蚕の紡ぐ絹糸シルクより美しい光沢のある緑色で、強伸力に優れてしわになりにくい性質を持ち、「繊維のダイヤモンド」や「繊維の女王」と呼ばれます。
青いネットの中にクヌギの木と天蚕の幼虫が入っています
クヌギの木は強度の剪定を毎年行い、大きくならないようにします
一見するとどこに天蚕の幼虫がいるか分かりません
どこにいるか分かりますか?
ここにいます!人の人差し指くらいの大きさです(苦手な方ごめんなさい)
実は、このポーズはいわゆる「擬態」です。まだバレていないと思って、必死にクヌギの葉に化けています。
まるで拝んでいるように見えるこのポーズを見ているとなんだか愛らしく見えてきます(笑)
この幼虫は、クヌギなどの葉を食べて大きくなりますが、葉を食べつくしてしまうと葉を求めて動き回ります。その時に天敵(アリ、クモ、カメムシなど)に襲われてしまうので、枝ごと切り取って、葉の多いクヌギへ移動させます。(これを「切り返し」と呼びます)
今の時期は幼虫が大きくなり、天敵のサルに襲われることが多いそうです。サルについては、今のところ有効な防御手段がなく、頭を悩ませています。
1つの木に多く幼虫がいる場合も切り返しによって、密度を減らします
幼虫は4回脱皮を行いながら成長し、やがてさなぎになるために繭(まゆ)を作ります。
手の横に見える緑色の楕円が繭(まゆ)です
クヌギの葉を重ねて作るので、見つけるのは難しいです
繭は葉ごと収繭(しゅうけん)し、種繭、加工繭(生糸・手紬糸)に区別します
加工繭は、お湯で煮て、糸をずりだし、糸車などで撚りがけします
織り機で織り込んでいくと素敵な織物が出来上がります
ちなみに1反の反物を作るのに、繭は約3,000個必要なのだそうです!
非常に手間がかかり、天敵も多い天蚕の糸で織られた反物が高価である理由が分かります。
しかしながら、糸の生産量が限られ、非常に労力がかかることから、天蚕農家はほとんどいなくなってしまいました。
里山で営まれていた暮らしを後世に伝えていくためにも、こういった活動への参加者が増えるきっかけになればうれしいです。
受講生もスタッフも天蚕の歴史や文化についての説明を熱心に聞き入っていました
受講生は、天蚕の大きさや作業の大変さに驚いていましたが、同時に興味が湧いたようです。
このブログへの取材依頼や情報提供、ご意見・ご要望はこちら
松本地域振興局 総務管理課
TEL:0263-40-1955
FAX:0263-47-7821