冬眠したくなってきた、うさぎ担当ぴょんきちです(うさぎは冬眠しませんが)。
皆さんは、『逃げ上手の若君』(通称:『逃げ若』)という作品を知っていますか?
現在も連載中の漫画なので「名前だけ知ってる」なんて方もいらっしゃるかもしれません。
こちら、長野県に住んでいる方にはぜひ見てほしい!なぜなら、諏訪地方(諏訪大社)を中心とした、信州が舞台の作品だから!
そして今回「諏訪が舞台なのになぜ松本のブログでそんなに取り上げるの??」というと…
この作品の中に、【桔梗ヶ原で出会う、キツネ面を被った”ゲンバ”という登場人物】がいるからなのです。フルネームは風間玄蕃(かざまげんば)くん。
私は最初にこれを見たとき「ちょ、めっちゃ地元やないかい!」と思いました(ぴょんきちは塩尻市民です)。
既にピンと来た方もいるかと思いますが、彼は塩尻に伝わる伝説のキツネ、玄蕃之丞(げんばのじょう)をモデル…いわゆる『元ネタ』にしていると考えられます。
ピンとこなかった方にも、「玄蕃まつりの”げんば”だよ」と言えば ほほう…? となるでしょうか。
とはいえぴょんきち自身も、「なんか塩尻にいたキツネの話」くらいのぼんやりとした印象しかありません。
そこで今回は、改めて玄蕃之丞について調べてみることにしました!
(玄蕃允とする文献もありますが、今回は大多数に倣って玄蕃之丞と表記させていただきます)
調べものと言えば図書館!ということで、塩尻市大門のえんぱーくにある塩尻市立図書館へ。
児童書や民話集、歴史書などを8冊選んで借りてみました(これでも見つかった資料のうち1/4くらいに絞っています…)。
アルクマと一緒に目を通していくと、書籍によって多少の差異はあれどおおまかに共通事項が見えてきます。
①玄蕃之丞は桔梗ヶ原(塩尻市)に住んでいた親分キツネ。松本平にいたほか地域の親分キツネたちすらも従えていた。
②人間の娘に化けていたずらを繰り返していた。
③大名行列のふりをし、人間をからかっていた。
④汽車にたくさんの子分たちが曳かれて死んだことを悲しみ、汽車に化けて人間を驚かせた。
非常にざっくりとですが、まとめるとこの辺りが玄蕃之丞といえば!のメインとなってきそうです。
(複数の書籍に共通する事項を大雑把に抜き出しております。ご了承ください。)
まず①松本平には他にも親分キツネがいたという話。
この時に出てくる他の親分たちにもそれぞれ住処と名前が記載されており、塩尻市のほかにも松本市・田川地区~山形村~松本市・岡田地区などの地名が出てきます。
松本平にいた動物の歴史についての書籍では、この辺りにはキツネがたくさん住んでいた…という記載がありました。
キツネに化かされた…というだけなら全国色々なところにある話ではありますが、玄蕃之丞の他にも県内にはキツネにまつわる民話が多数あるようですので長野県民…とくに松本平の人にとって、身近な動物ということでキツネが物語に描かれることが多かったのかもしれません。
次に②人間の娘に化けていた話。
書籍によっては「人間の娘に恋をしたが、その娘が結婚してしまったことをきっかけに玄蕃之丞は娘に化けたいたずらをするようになった」と書いているものもあります。基本的に玄蕃之丞は「いたずらをするキツネ」という描かれ方が多いので、恋をしたという話は個人的には少し意外に感じました。
ちなみに、先に紹介した漫画のゲンバくんは女の子に時折”でれでれ”してしまう…という性格付けがされています。もしかしたらその設定はこの辺りからきているのかもしれないなぁ、と思うぴょんきちでした。
次に③大名行列のふりをした話。
大名行列が来たら頭を上げてはいけない、というのは皆さんもご存じのことと思います。そのため皆が慌ててへりくだるのを面白がった…というのはいかにもいたずららしい感じがしますね。
お話によっては「木曽路・中山道が通っていて、毎日のように大名行列が通る土地だ」という補足がありました。最初に大名行列のふりをした…という部分を読んだときはなんとなくふーんと読み流してしまったのですが、なるほどそう考えるとそもそも大名行列が通らない土地では発生しえない「この土地ならではのストーリーだな」という気がして面白いところです。
そして④汽車に化けて驚かせたという話。
玄蕃之丞の話として一番中心に据えられているのはこの話のようです。絵本のタイトルや、物語としてのクライマックスはこれになっているものがほとんどでした(調べていくうちにぴょんきちも、そういえばこの話だけは知ってるなぁと思い出しました)。
この話の結末では「キツネたちの魂を鎮めるために神社(または碑)を建てたところ、いたずらが減った」と終わるものも多いようです。汽車に関する物語の舞台は塩尻市の九里巾とされており、その付近には今も玄蕃稲荷神社があるとのこと。
汽車が開通したという展開や、現在も存在している碑・建物が紹介されるなど、ここまでの話に比べるとずいぶん現代的で現実味があるような気がします。
汽車の話は篠ノ井線が開通した頃…明治初期~中期と明確に時期を描写した物語も複数見られますし、汽車に曳かれたキツネたちを弔ったからいたずらが減った…というと伝説的ではあるものの、実際は汽車が通るなど近代化していく塩尻市→自然が少なくなる→キツネが減る、という繋がりがあるのでは?と考えを巡らせるところです。
この「比較的”最近の話”感」が、玄蕃まつりといった今も身近で行われているイベントやその名前に繋がっていると言えるかもしれません。
せっかくなので塩尻市の九里巾にあるという玄蕃稲荷神社を訪ねてみました。
残念ながら現在は立ち入り禁止となっているようですが、奥にはうっすらと灯篭や赤い前掛けをかけているお狐さんらしき像が見えました。
…という訳で、玄蕃之丞の伝説がどんなものか改めて知ったぴょんきちとアルクマ。
冒頭で紹介した『逃げ上手の若君』では、他にも長野県民が「おや…これはもしや…?」と感じる展開やちょっとした言葉遊びなども随所に出てきます。玄蕃之丞を調査したことで、「これは伝説がモチーフになっているのかも!」なんてことに他にも気付けるかもしれないと、これからより一層ゲンバくんの活躍が楽しみになりました!
今回は本当にざっくりと全体図を見ていっただけなので、さらに知りたいという方は実際に調べていただくともっと色々なことが見えてくると思います。
その際は、ぜひ塩尻市立図書館へ!今回カウンターの司書さんに「玄蕃之丞のことがわかる資料を探したい」と相談したところ、借りられないほどたくさんの資料を教えて頂きました。自分だけは見つけられなかったであろうものがたくさんあったので、今後も調べ事があるときは相談させてもらおうと感じました。
2010年に塩尻総合文化センターからえんぱーくへ移転した図書館、もう13年にもなるとは思えないきれいな建物です。ぜひ皆さんも訪問してみてください!
*おまけ*
『逃げ若』では、ゲンバくんとのやりとりが多い”夏”という女の子がいます。これはもしや…?!よろしければこちらもご覧ください!
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