2024.07.08 [ 計量検定所 ]
計量女子の計量検定所日記~いい”時”をつくって、届ける…ってコト!?~
こんにちは!計量女子です。
5月20日の世界計量記念日に合わせて国立研究開発法人 産業技術総合研究所(通称:産総研)がニコニコ生放送で配信した動画の内容を計量女子ができるだけ分かりやすく紹介するシリーズの6回目、とりあえずの最終回です。
※実際に放映された動画から作成したキャプチャー画像を使用していますが、著作権の所有者である国立研究開発法人産業技術総合研究所(ブランディング・広報部)に当該著作物の使用許可を得ております。
今回は、計量標準総合センター 物理計測標準研究部門 時間標準研究グループ 安田 正美(やすだ まさみ)グループ長による、時の定義についてのお話です。
時の定義を説明する前に、時を計測する計量器、「時計」を構成する3つの要素を紹介します。
それは、
・振動子
・カウンター
・基準
例えば、振り子時計の振動子=「振り子」、カウンター(振動子の振動を数えるもの)=「歯車と針」、そして基準=「地球の自転」です。
長さや質量と同じように時(1秒)にも基準があり、かつては地球の自転や公転を基準として時を定義していた時代がありました。
しかし、地球の動きは一定ではないことが分かってきたため、1967年にセシウム(Cs)原子を用いた定義が新たに定められました。
現在の1秒の定義は、
セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の
9,192,631,770(九十一億九千二百六十三万千七百七十)倍に等しい時間
※計量単位令(平成四年政令第三百五十七号)別表第一(第二条関係)より抜粋
これはセシウム原子泉(せん)時計、セシウムを使った世界にも十数台しかない高性能原子時計です。
(正確には「周波数標準器」と呼ばれるもので、時間の基準となる標準器です)
セシウム原子を基準とし、マイクロ波発生装置で生じたセシウムの周波数を周波数カウンターで数えることで1秒を確認するという途方もない装置ですが、その性能は数千万年経過しても1秒のずれもないという精度です。
そして近年では、セシウム原子時計よりも高性能な光格子時計が開発されていて、その性能は数百億年に1秒のずれもないという正確さだそうです。
現在、2030年のSI秒定義改定を目標に各国で光格子時計の研究が進んでいるそうです。
部屋いっぱいに配置された機械と配線、これが産総研が世界に誇るイッテルビウム(Yb)光格子時計です。
※イッテルビウム:ytterbium、原子番号70。スウェーデンのイッテルビーで発見されたためその名が付いた。
1秒の定義を高精度にして何の役に立つのか🤔?という疑問がありますが、身近にあるものだと例えばカーナビや携帯電話のGPS測位技術は正確な時間の測定に負うところが大きいため、光格子時計の開発が進めば将来的には今より正確に現在位置を測位できるようになる可能性があります。
5月20日の世界計量記念日を発端として難しい話が続きましたが、最後に安田グループ長の携帯電話に貼られていた「ちいさくてかわいいもの」を紹介して計量女子の産総研動画シリーズは一旦おしまいです。
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