2013.05.18 [ 自然・山・花 ]
つつましく咲く山野草のように【井月さんのこころ10】
井月さんのこころ シリーズ その10
今年は、4月後半から5月上旬にかけて異常低温が続き、農作物の凍霜害が長野県全体で16億円を上回る規模となっています。
上伊那地域でも果樹を中心に1億5百万円の被害がでています。
(4月の凍霜害の被害結果(確定報)がまとまり、6月4日公表されました。
県全体で35億6千2百万円余、上伊那地域は2億8千4百万円余と速報時点の2倍以上となりました。)
特に、4月20日(土)夜から21日(日)朝にかけて積雪があり、22日(月)朝にかけて凍て付き、りんごや梨の花の雌しべに大きく影響したようです。
公用携帯に残っているメールで上伊那地域の霜注意報の発令件数を比べてみると、4月は昨年が12回、今年は21回と多く、特に今年は4月21日から5月8日までは、4月29日(30日朝)を除き連続して霜注意報が発令される異常な低温状態が続きました。
「夏も近づく八十八夜」とか「八十八夜の別れ霜」とか云われますが、今年の「八十八夜」は5月2日、「立夏」は5月5日でした。
さて、そんな訳で、立夏を過ぎて季節は夏に入りましたが、八重桜や山桜は、まだまだ咲き残っています。
田植えも例年に比べて少し遅れ気味のようですね。
そして、足元を見れば、菫(すみれ)がつつましやかに可憐な花を咲かせています。
(花菫)
井月さんも杖を供にして、夏が近づいて日差しが延びた伊那路を山野草などを愛でながら、歩いていたことでしょう。
根を包む紙を貰うや花菫(すみれ) 井月
以下、この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、
路傍に菫が咲いている。小さい紫色の花。多年草で道端に自然に自生する。あまりに美しく、可憐なので、よくよく見入っていたが、一株こいで持って行きたくなった。さて近くの家から紙を貰って包もうとする。自分の家をもたない井月。次の訪問先への土産になるのであろうか。繊細な、優しい心情を伺うことが出来る。
(菫・春)
道端を覆う山吹の黄色い花も満開です。藤の紫も鮮やかです。
(山吹の花・・・・・実が成らない。)
山吹に名をよぶ程の滝もがな 井月
「山吹」といえば、子供の頃、我が家の座敷の襖に太田道灌の山吹伝説の漢詩があったのを思い出しました。
そうです、蓑(みの)ひとつさえ無い貧しさを山吹の一枝に託した少女のお話しです。
江戸城を築いたことで知られる道灌さん、農家で雨具を所望し、少女が渡した山吹の花一枝の意味を理解できなかったのを恥じ入って、和歌の道を究めようと励んだのだとか。
読み下しは、たしか「少女贈る花一枝。少女は言わず、花は語らず。云々・・」 出典は、と云えば、
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