2016.03.11 [ 地域振興局 ]
“1日1組様限定のおもてなし” 農家民宿「月のもり」(辰野町)
息子に様々なアレルギーがあったので私たち親子は実家に帰ることすらできませんでした。なぜかと言うと、実家が息子を受け入れられるような食事ではなかったし、父が喫煙者だったので喘息の症状が出たりしたためです。
だから、私たち親子のように実家にも帰れないような行き場に困っている方にも安心して来てもらえるようなところを作れたらいいなと思いました。他には、車いすの利用者でも利用しやすい宿泊施設を造ってほしいという声もあったことなどがきっかけです。
そして、ひと組のお客様と同じ時間を過ごして、その方が望んでいるサービスを提供できたらとの思いから、旅館やペンションではなく農家民宿としました。民宿を始めて7年になります。
室内の様子
‐「月のもり」の名前の由来を教えてください。
冬の雪の季節に、西の山に月明かりが乱反射して、窓から銀色の光が差し込んできました。その光景に鳥肌が立つほど感動したことと宇宙が近くに感じたことから付けました。「もり」はひらがなですが、「森」と「守」の両方の意味を込めてひらがなにしました。
西の山
‐農業はどうやって覚えたのですか?
私には2人の恩人がいて、1人は南箕輪村で有機農業をされている師匠、もう1人は辰野町の師匠。私のやっている農業の基礎になる部分はこのお二人から教えてもらいました。
農業でこだわっている点は、なるべくゴミを出さないということ、ここから見える範囲ですべてを賄うことです。例えば、ビニールマルチは全く使いません。他には牛糞や鶏糞等は袋に入っているものは使わないとか、硝石灰の代わりに撒きストーブの灰を使うようにしています。薪にする木もなるべくこの周辺で採ってきますし、ウサギを飼っているのも兎の糞がほしいからです。
‐野菜が主役の料理を提供していらっしゃいますが、野菜への思いやこだわりを聞かせてください。
食物アレルギーの息子に母乳を与えるには、私は息子がアレルギー反応を起こさない物を食べて飲ませるしかなく、ある程度の期間は玄米と野菜の煮物と海藻とキノコの味噌汁くらいしか食べることができない時期がありました。その時に初めて野菜って「すごいな」、「美味しいモノ」だなと気づきました。
更に、師匠の野菜を食べたときに「俺の父ちゃんすげーぜ」みたいに野菜が何かうれしそうに訴えかけてくるように思えて倒れそうになりました。「何だ!この表情のある野菜は・・・。」と思いました。それまでも無農薬の野菜を食べていましたが、レベルの違う凄さを感じました。
野菜って本当に生きているものを食べているというか、作り手の感情をちゃんと受け取って成長して野菜になるんだなと気付き、野菜には無限の可能性があると思ったんです。
私はもともとグラフィックデザイナーだったので、紙の上で色とかデザインを表現することを生業としていたので、今度は立体的に野菜を使って表現したいと思いました。
見た目もきれいで、美味しくて、こんなに面白いものはないなと思ってやっているので、ひと山100円みたいな野菜を見ると、なんだか肉や魚に比べて下に見られるようなところがありますが、「実は違うよ」ということをすごく言いたくて、周りの人がそんなふうに思ってくれるところまでポジジョンを上げたいなと思っています。
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