2013.03.16 [ 歴史・祭・暮らし ]
入神の書『幻住庵記』のように 【井月さんのこころ3】
井月さんのこころ シリーズ その3
3月10日は、井月さんの新暦による忌日です。
この日から伊那市創造館に井上井月の常設展示室が開室されました。
伊那市創造館
井月さんは、芭蕉に心酔し、その俳文「幻住庵記(げんじゅうあんのき)」を諳んじており、芭蕉翁の生き方を見習って俳諧一筋の生涯を貫きました。時に求めに応じて、酒を飲みつつ、およそ1300字余りを一気に書き上げたと伝わります。その書を見た芥川龍之介をして「入神と称するをも妨げない。」と言わしめたのであります。
1月26日(土)開催した「い~な上伊那地域づくりフォーラム」のパネルディスカッションでも話題になりました。こちらです。
井月さんが書いた芭蕉翁の「幻住庵記」は、少なくとも真筆集に載っている8点が存在するとのことですが、そのうち6点は襖や屏風に書かれた4枚組もので、残り2点は軸装1枚もので、常設展示されているものは、この軸装のうちの一点です。
一行あたりの字数が書き出しと書き終わりでは、かなり違っており、後ろの方へいくほど字が大きくなっていきます。(右側の書下しを参照。)
しかし、それが見事なまでに調和していて、一幅に収められてしまう。 と、なるほど『入神の書』であります。
以下、芭蕉翁「幻住庵記」終段を抜粋します。
たどりなき風雲に身をせめ、花鳥に情を労じて、しばらく生涯のはかりごととさへなれば、つひに無能無才にしてこの一筋につながる。楽天は五臓の神を破り、老杜は痩せたり。賢愚文質の等しからざるも、いづれか幻の栖(すみか)ならずやと、おもひ捨ててふしぬ。
我が道の神とも拝め翁の日
井月
(「翁の日」は芭蕉翁の命日で、旧暦十月十二日)
今回常設展示されているのは、蕉門十哲(しょうもんじってつ)の俳句が記された掛け軸や井月句の短冊など、井月さんの真筆を中心にした33点で、井月さんを郷里の長岡に帰す旅費を捻出するために催された送別句会の席表(明治5年・東伊那「中村家」参加者113名)などもあります。
蕉門十哲の俳句軸など
柳廼家送別書画展観会(席表)
ブロンズ像は、辰野町出身の彫刻家 瀬戸剛さんが昨年の日彫展に出展された「遊子(ゆうし)」という塑像作品をもとにして鋳込んだものとのことであります。
このブロンズ像、なかなかの男前です。井月さんも「千両。千両。」と喜ぶに違いありません。
汝れはまだ北枝の梅か井月忌 青巒
西岸の芽吹き待たるる井月忌 青巒
前回(その2)の続き
吾れも数汝れも数とや連れの凧 青巒
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