2013.12.20 [ 歴史・祭・暮らし ]
小さな村の壮大な試み~農村文明・全国村長サミット
魅力発掘探検隊(歴史・祭り・暮らし班)のIです。
前回の投稿「地域おこしのアイデアとヒントを求めて」では県外の事例を紹介させていただきましたが、普段は県内各地の地域おこしの現場をちょくちょくお邪魔させていただいております。
今回は、”い~な 信州”ということで、その中でも個人的に特筆すべき、と思った事例をお知らせしたいと思います(”上伊那の魅力発信”一寸お休みですみません!北信の皆様、話題をお借りします)
先日”年縞(ねんこう)”という言葉がニュースで流れたのをご存知でしょうか。福井県三方五湖の水月湖の湖底に堆積した地層が「奇跡の堆積物」としてタイムカプセルのように保存されており、その中に含まれている花粉やプランクトン、火山灰などで当時の地球の気候変動や災害について年単位の精度で調査できることが確認され”世界標準の時計”と認められました。それを発見・研究されてきたのが、「環境考古学」を創造された世界的に著名な安田 喜憲(よしのり)先生(国際日本文化センター名誉教授)です。
安田先生のことを知ったのは、諏訪で縄文や御柱に関心を持つようになったときに、縄文文化を高く評価される、日本を代表する哲学者 梅原 猛先生の本の中でした(安田先生には、地方大学で新たな分野の学問を切り拓かれる大変なご苦労をされる中、梅原氏に見出されたという経緯があったそうです)。
遡ること三年前の秋、その安田先生の講演が木島平村で聞けると知り、「農村文明シンポジウム」という聞き慣れない(怪しげな?!)名の催しに出かけ、千人ほどの聴衆とともにお話に魅了されました。
安田氏の考えをごく簡単に要約させていただきますと、環境考古学の研究と稲作発祥の地とされる中国長江文明の調査に参加された経験等から「今まで世界の主流であった畑作牧畜を起源とする森を破壊する西洋の文明(金がシンボル)に対して、アジアで営まれてきた稲作漁撈の森と水を大事にする東洋の文明(天と地が結合して水を与えてくれる山とそこから産まれる玉器(ヒスイ等)がシンボル)においては、長い年月の間に自然の中であらゆる命とともに生きる日本人のこころを育んできた。地球環境と人間が問われている現代こそ、この東洋、そして日本の農山村の生き方・価値を見直すこと、すなわち”農村文明”が求められている。」という内容です。
この考えに共鳴した多くの有識者・教育者により木島平村に農村文明塾が発足、私も翌年の塾講座に参加、地域づくりの座学や地域見学をさせていただき第一期の受講修了生となるご縁をいただきました。
(全5回のうち3回出席しただけの落第生にもかかわらず、特産内山和紙で手づくりされた修了証を賜り恐縮、打ち上げの席で村長さんや先生方、住民の皆さん、地域づくり協力隊員の方々とともに復活した伝統芸能「烏(からす)踊り」の輪に加えさせていただき、生涯の木島平ファンがまた一人生まれてしまいました。)
印象的だったのが、有識者と言われる方々や大学の教育関係者に都市化偏重と人への影響に対する危機意識が強いこと、そして、農山村、特に日本のふるさと本県信州への期待が大きいことでした。
農村文明塾は、上記の農村学講座の他、大学・企業・行政と連携したコンソーシアム(実践的な学びと交流の場)が開催され、特に都市の学生の受け入れが活発に行われていることが特徴です。
この11月15,16日には、昨年に引き続き「第2回全国村長サミット ~『むらびとが輝くとき、それは村が輝くとき』~そして来訪者も輝き、都市(まち)も輝く~」が開催され、私にも通知をいただきお伺いしました。
初日の「長野県むらびとフォーラム」は金曜日で仕事があり行けませんでしたが、県下5名のむらびとのパネリストによる話合いあり(伊那谷からは紫芝 勉さん(田切農産代表(飯島町))と太田いく子さん(農家民宿のカリスマおかあさん(飯田市千代))の2名。)、交流会では国学院大学学生による雅楽演奏・舞、地元の子供達による有名な鬼島太鼓、と全国184村ののうち参加された33の村の村長さんをお招きしての”お・も・て・な・し”は大変盛り上がったそうです。塾の名誉顧問である阿部知事も交流会に参加、「県は困難を抱えている市町村とともに立つ存在でありたい」旨の挨拶をされたとのことです。
2日目に参加、場所は木島平村農村交流館。旧小学校を改修しこの4月にリニューアルオープンした研修宿泊施設だそうです。
まず講堂で、滝田 栄氏による記念講演(撮影は不可)。有名俳優ながら仏教研究家で仏師、原村のむらびととして無農薬栽培の農業の実践など驚くべき人物、迫力でした。こういう方が日本の農山村、そして信州の強力な味方であることに感謝、です。機会がありましたらぜひ聴講ください!
懐かしい小学校の教室を会場にした4つの分科会のうち「農山漁村の暮らしを考える」に参加。
北海道音威子府村の佐近村長、熊本県相良村の徳田村長、同じく熊本県球磨村の柳詰村長の3名がパネリストで参加されました。印象的でしたのが御三方とも、本当に飾らない率直な一村人の立場から、ご自身の村と体験談を話されていたことでした。特に、学生として上京した当時、出身地を村と書いて馬鹿にされ恥ずかしい思いをしたが、現在村を心から誇りに思っていると話された徳田村長さん、その相良村が来年の第3回サミットの開催地となります。
また、前日のむらびとパネリスト、太田いく子さんも会場から発言、登校拒否になっていた女の子が農家民泊で元気を取り戻してくれた事例を紹介、農村のもつチカラを話されました。(たまたま小生、太田さんの後ろの席に座っていたため、ご指名で、おじさん声で女の子からのお手紙を朗読するお役目に。その節は失礼いたしました!)
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