2024.06.12 [ 計量検定所 ]
計量女子の計量検定所日記~プランク定数で最強になった「キログラム」は好きですか?~(後編)
こんにちは!計量女子です。
5月20日の世界計量記念日に合わせて国立研究開発法人 産業技術総合研究所(通称:産総研)がニコニコ生放送で配信した動画の内容を計量女子ができるだけ分かりやすく紹介するシリーズの3回目、~プランク定数で最強になった「キログラム」は好きですか?~の続きです。
※実際に放映された動画から作成したキャプチャー画像を使用していますが、著作権の所有者である国立研究開発法人産業技術総合研究所(ブランディング・広報部)に当該著作物の使用許可を得ております。
まずは、計量標準総合センター 工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ 大田 由一(おおた ゆういち)主任研究員による分銅校正のお話です。
大田研究員が取り組んでいるのが、外部から依頼される分銅の校正です。
例えば、私達の身の周りにあるはかり(質量計)が正確であるかを確かめるには分銅が必要不可欠ですが、載せる分銅の質量が正確でなければはかりが正確かは分かりません。
産総研では、「計量標準」(分銅の場合、標準になるものは質量が正確に分かっている別の分銅)を使い、計量業務に使用されている各種器物の校正(=計量標準と比較してどの位の器差があるかを確認すること)を実施しています。
この部屋で行っているのは、0.1mg~20kgまでの分銅校正です。
以前は1mg分銅から実施していましたが、最近は環境汚染の分析などに0.1mg(サブミリグラム)の分銅が必要となってきたのだそうです。
ということで、0.1mg分銅は画像を拡大しても何が何だかよく分からない大きさしかありません😵
このレベルの分銅校正になるとほんのわずかな温度変化(例えば人間の体温)でも影響が出てしまう上に、ピンセットでつまむことすら困難です。
そこで、大田研究員は微小分銅を温度変化などの影響を受けることなく正確に校正できる装置を開発しました。(倉本研究員もそうでしたが、研究者の皆さんは研究だけではなくて研究に使う装置もご自分で開発するんですね😳)
画像奥の銀色アームの先端に微細な「くし」(くしの歯のサイズ0.2mm、歯と歯の間0.3mm)が取り付けられており、くしで分銅を取って電子天秤に載せます。
微小分銅の電子天秤への載せ降ろしなど作業の全てをパソコンで制御できるので、普段は部屋が完全に無人の状態で校正を行っているそうです。
微小分銅から一転、今度は大型分銅の校正のお話です。
説明してくださるのは、計量標準総合センター 工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ 藤田 一慧(ふじた かずあき)研究員です。
産総研では大質量分銅と呼ばれていますが、50㎏から5,000㎏(5t)までの大きな質量を持つ分銅を格納してある部屋があり、ここでも分銅校正を行っています。
青い箱の中には、50㎏分銅から500㎏までの分銅が入っています。
大質量分銅の校正はどのように行うかというと、まずはあらかじめ質量が分かっている1㎏分銅を基に、1㎏+1㎏=2㎏、2㎏+2㎏+1㎏=5㎏…のように基準となる分銅を作ります。
50㎏の正確な分銅ができたらそれを基にして今度は50㎏+50㎏=100㎏、100㎏+100㎏=200㎏…と基準分銅を作り、最終的には複数の分銅の組み合わせにより大質量分銅を校正することができます。
こちらが大質量分銅を校正する電子天秤です。
各都道府県の計量検定所でも大型分銅用の電子天秤は所有していますが(もちろん長野県でも持っていますよ!)、長野県計量検定所にはない設備がこちら↓
✨天井式クレーン(ホイストクレーン)✨
本県の分銅倉庫には天井式クレーンが付いていないので分銅を動かすにはフォークリフトを使用しますが、産総研や一部の計量検定所では天井式クレーン付きの分銅倉庫を所有しています。うらやましい😲
大質量分銅の校正は複数名の職員で行うため、分銅の移動に支障をきたさないようフックブロックに東西南北の表示がしてあり、安全にも配慮していることが分かります。
そして産総研が所有する一番の大質量分銅が、画像中央の銀色をした円筒形の分銅。
1個の質量が1t、それが5個重なっているので合計5tです。
校正の基準になる分銅だけあって、いかにも基準!という感じがしますね。(何が?🤔)
次回のブログは質量に加速度(m/s2)が加わった力(ちから)の世界に関するお話ですが、そちら方面の素養が全くない計量女子がどこまで動画の内容を理解してブログを見てくださっている皆さんに分かりやすく説明できるか甚だ不安です。
こんなことなら高校で物理を選択しておけばよかったです😨
(~力標準の実荷重式は約540,000Nです~ に続きます。)
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