2014.02.06 [ 文化・伝統 ]
松本地域の伝統工芸『松本押絵雛』
まだまだ寒い日が続きますね。
ソチオリンピック開幕も間近に迫り、ウィンタースポーツに打ち込むのもいいですが、やっぱり暖かい春が待ちどうしいです。
さて、春といえば何を思い浮かべますか?桜、卒業、新生活、花粉症…
いろいろありますが、忘れてはいけないのがひな祭り。私の実家でも床の間にお雛さまが飾ってあったことを思い出します。
ところで松本の伝統的な特産品に『押絵雛(おしえびな)』という布で作る雛人形があることはご存知でしょうか?
今回は全国で唯一、松本押絵雛を製作・販売している『ベラミ人形店みむら』さんをご紹介します。
こちらがお店の外観。何とも言えないレトロな雰囲気。
店内はこんな感じ。たくさんの人形が並んでいてまるで博物館のようです。でも昔の駄菓子屋のような、どこか懐かしい空気も感じます。
こちらが店内に飾ってある押絵雛。とても布で作ったとは思えない立体感と豊かな表情に思わず見入ってしまいました。
※店内は写真撮影禁止ですが、今回は特別に許可をいただいて撮影しています
これらは着物の素材から一つ一つオーダーメイドで丁寧に手作りするので、三人官女や五人囃子などが勢揃いした『十五人揃い』を納めるには5年もの歳月がかかるそうです。
では、どうやったらこんな立派な人形が作れるのでしょうか?
押絵雛は次のような行程で製作します。
①まずは紙に元絵(下絵)を描きます
②元絵から分解図を起こし、厚紙に張って型紙にします
③型紙の上に綿をのせ、各部分に合った布で包み立体感を出します(顔も同様に包み、表情を手書きします)
④元絵に合わせて③で包んだ各部分を組み合わせて貼り、裏打ちして完成
各工程すべてが手作りなので、一つとして同じものはありません。
押絵雛の歴史は古く、江戸時代には庶民のお雛様として地方を中心に全国各地で作られていました。特に松本は全国的な産地として有名で、士族の妻女が製作して商人が売り歩く形で県内のみならず県外にも販売しており、明治初期には生産の最盛期を迎えました。
しかし、様々な理由(交通網の発達による立体的な雛人形の全国流通など)により明治後期なると生産が衰え、ついには生産者が途絶えてしまいました。
それから数十年後の昭和40年代に、ベラミ人形店の三村隆重さんが松本の古民家に残っていた明治期の押絵雛をもとに、東京の押絵羽子板職人に弟子入りして習得した押絵の技術を駆使して、現代に製作技法を復活させたのです。そして現在では三村さんご一家が唯一の職人としてこの松本の伝統を守り伝えていらっしゃいます。
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