2013.08.10 [ 歴史・祭・暮らし ]
秋立つ頃【井月さんのこころ21】
井月さんのこころ シリーズ その21
往く夏を惜しむようにミンミンゼミやエゾゼミが盛んに鳴いています。
写真: エゾゼミ
稲の穂が出揃って、暦の上で季節は秋に入りました。
写真: 稲穂
子供の頃は、稲の穂が盆前に出揃うことは稀であったように記憶しています。
暦の上で立秋は旧暦7月1日、今年は8月7日(水)でした。
涼しさを探し求めて伊那谷をあちらこちらと漂泊しながら、季節の移ろいを感じ取って・・・・・
井月さんには、そんな立秋の頃を詠んだ句が数多くあります。
蔵のつぶしに残る前年の籾も次第に少なくなっていき、半端な米は甘酒用などの麹(こうじ)へと換えられたのでしょうかね。
秋立や麹に換るはした物 井月
在宿の札かけさせて今朝の秋 井月
秋立や声に力を入れる蝉 井月
以下、後者の句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、
立秋は、陽暦八月八日ころ。蝉で早いのは春蝉、次いでにいにい蝉、油蝉、みんみん蝉。秋に鳴く蝉は、ひぐらし・法師蝉。 ここはみんみん蝉か、声に力を入れて鳴く。七年も地下に潜っていた幼虫が、成虫になっては一週間しか生きない。その宿命を弁えてか、猛暑の中、密かに迫る秋を感じてか、ここを先途と鳴き立てる。「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声 芭蕉」
(立秋・秋)
更に、
塗り下駄に妹が素足や今朝の秋 井月
続けて、この句の評釈についても同様に引用させていただくと・・・、
漆塗りの上品な下駄は女性用。いもは、男性が自分の恋人や妻をいう語。また一般に、女性を親しんで呼ぶ称。今朝の秋は、立秋の日の朝。透き通る白い素足で塗り下駄姿の女性のさわやかさ。
立秋の今朝、衣更えと同じ気分転換。暦は立秋でも、まだ暑いが、高冷地の信州では、朝晩吹く風の音、鳴く虫の音に秋の訪れを察知する。
(立秋・秋)
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