2013.09.26 [ 歴史・祭・暮らし ]
名物「杉島ドーナツまんじゅう」と森林鉄道の跡
こんにちは。魅力発掘探検隊のNです。
今回は、伊那市長谷の奥原菓子店の「杉島ドーナツ万十(まんじゅう)」をご紹介します。
伊那市役所の南で天竜川に合流する三峰川を遡ると、広大なかつての長谷村に入ります。その杉島という集落に「奥原菓子店」があります。菓子店とはいっても、菓子だけではなく日用雑貨も扱っています。
この店こそ知る人ぞ知る「杉島ドーナツ万十」を製造販売している店なのです。何と店の看板も「奥原菓子店」ではなく「杉島ドーナツ万十」の文字でした。
「杉島ドーナツ万十」は直径7cm程のあんこの入ったまんじゅうを油で揚げて、砂糖をまぶしたドーナツです。正に名前のとおりのお菓子です。何だかとてつもなく甘~い物と思われそうですが、心配は要りません。それ程甘くはないのです。餡は黒餡と白餡がありますが、私は黒餡が好きです。酒飲みの友人は「絶対に白餡がいい」と申します。
お店でお聞きしたところ、先代のお父さんが松本の学校で習ってこの地で作り始めたもので、もう70年以上の歴史があるのだそうです。でも、どうしてここ杉島で随分ハイカラな洋菓子を作ったのだろうと思いませんか?
かつて、ここ杉島には大勢の人がいました。
営林署の森林鉄道が、ここを起点に更に奥に伸びており運行されていました。奥の山々から伐り出された木材が、この森林鉄道を利用してどしどしと運び込まれました。今は平地となっている場所が、こうした木材の集積場でした。ここからは、はるか東の国鉄(当時)伊那北駅までトラックで運ばれていたのです。
また、炭も出荷されており、農協の炭の検査員もいました。
更に、この奥にはいくつかの集落があり、そこの人々も杉島に出てくるのに、森林鉄道を利用していました。
大勢の人々が働き、集まるにぎやかな場所だったのです。
昭和34年日本を襲った伊勢湾台風は、この谷にも大きな被害をもたらしました。
森林鉄道は寸断され、再開されることはありませんでした。
森林鉄道を利用していた集落も、やがて移転してゆきました。
三峰川沿いにあったこの奥原菓子店も流され、一段高い場所に移り現在の地で再開したのです。災害から復興して場所は移っても、味は昔から変わりません。
「杉島ドーナツ万十」は、何だか懐かしい「おふくろの味」のハイカラな洋菓子です。
なお、飯島町役場の近くにある「どーなつ庵」は娘さんがやっているお店で、味は杉島の物と同じです。
このブログへの取材依頼や情報提供、ご意見・ご要望はこちら
上伊那地域振興局 総務管理課
TEL:0265-76-6800
FAX:0265-76-6804