2016.03.01 [ 歴史・祭・暮らし ]
目薬師様とグラマーなイチョウの樹
歴史・祭・暮らしグループのNです。
仕事・私用でパソコンやスマホに向かい、ついつい目を酷使していると気になることはありませんか。毎日の運転で、目に疲れがたまっているなあと思っている方も多いと思います。
そんな皆様に、是非お勧めしたいのが、目薬師様です。目薬師様を祀る今泉の薬師堂は、天竜川の東、三峰川の南に位置する伊那市富県北新の今泉地区にあります。このお堂は、道路から小高い丘の上に建てられています。桜の咲く季節には、「日本昔話」に登場する農村の様なのどかな風景になります。
この薬師様には昔、目を病む人が願かけをし、治ると石を奉納しました。その石は「めがね石」とよばれ、真ん中に穴の空いた平らな石で、今もいくつか残されています。
病の中でも目の病といえば、充血、痛み、かゆみ、腫れ、疲れと様々な症状が思い出されます。どれも想像しただけで、不快なものばかりです。視力が衰えたり、見えなくなったりすることは、不安であり更には恐怖であったと思われます。
医師の数もそう多くはなく、医療保険の制度も整っておらず、そればかりか自動車等の交通手段も普及していない時代には、目の病になっても眼科医の治療を受けるのは容易ではなかったと思われます。そんな時にすがるものとして、お薬師様は人気がありました。
ここ今泉の他にも市内東春近の瑠璃光庵(発電所の南)、市内長谷杉島の報恩寺、辰野町の七蔵寺が「伊那の三薬師」として有名で人気があったそうです。
この目薬師様のお堂の横には、古いイチョウの樹があります。この樹にはいくつもの気根ができています。実はこの樹は乳イチョウと呼ばれ、母乳の出ないお母さんが、樹の幹の皮を剥がしてゆき、煎じて飲んだのだそうです。このみごとな乳房の形から、きっとたくさんの母乳が出ると考えたのだと思われます。
粉ミルクなどが普及していなかった時代に、母乳がでないことはとても大変だったといいます。米をすり潰して水を加え脱脂綿にふくませて飲ませたり、ヤギや牛の乳を飲ませたり、「もらい乳」といって、母乳の出る女性を紹介してもらい分けてもらったりと、とても苦労したそうです。
地区の古老に聞くと、どこかで乳イチョウの話を聞いて来た母に、皮を剥がされた跡を見たことを覚えているといいます。実は、母乳が出るようにと信仰されているイチョウの樹は、県内に他にも何カ所かあります。
なお、ここに紹介したお薬師様も乳イチョウも、科学的にその効果が実証されているわけではございません。気になる症状がある時には、まず医療機関を受診して相談することをお勧めいたします。
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