2014.01.25 [ 歴史・祭・暮らし ]
人任せの春に【井月さんのこころ45】
上伊那誌の民族編に上伊那地域の年中習俗を集めた「1月17日」の欄には、次のような記述があります。
山の神様のお祭りの日。柳の木で弓を作り、矢にはつけ木を切って羽とし、弓に矢を添えて二張り、その年の暦のあきの方に矢を向けて門松の柱にかける。山の神様が弓矢で遊ぶ日だから山へ行かない。行くとけがをする。また、山の木が子を産む日だから、生きた木には山の神様が宿っているから、木はけっして伐ったり傷めてはいけない、といって山仕事を休み、山仕事仲間は御祝いをする。
(辰野町飯沼)
門松を取るも取らぬも子ら次第 愚良子
ついでに、本来は小正月の行事である「どんど焼き」が、春日愚良子先生がこの句に詠んでいるような塩梅で5日に早々済んでしまった(遡回その43)のですが、山祇講に前後して行なわれる小正月の鳥追い行事について、上伊那誌の民族編下の「言語地理学的研究」の節に、次のような記述がでてきます。
鳥追いの行事では音響を発して鳥を追うところが多い。特に棒の類を用いる地点が多く、槌で叩くところもある。・・・(中略)
ツチを作るのは北部の塩尻市北小野や辰野町小野に多く、・・・いずれもこの行事のための特別なツチを作るのである。たとえば、辰野町小野休戸では次のようである。
山からノリデ(ぬるで)を切って来て、丸く輪切りにして皮をむく。それに火箸で穴をあけて柄を通す。柄もノリデ。 円柱形部分の円柱面の直径は約1寸、円柱の高さは約4寸、柄の長さは6寸ぐらい。 男の子の数だけツチを作る。
(中略)
典型的な歌の例
キョーワ ドコノ トリオイダ オンミョージンノ トリオイダ
オラモ チット オッテ ヤロー ホンガラ ホーイ
(辰野町小野・飯沼山口)
(以下、略)
昭和50年代に発刊されたこの上伊那誌の民族編下によれば、小正月の鳥追い行事が小野では現在も3箇所で行われていると記録されていますが、田の神様を山へ帰す秋の十日夜の藁鉄砲(遡回その36)と同様、残念なことにいつの間にか廃れて無くなってしまったようです。
猛烈な寒さの中で、うまくピントが合いませんでしたが・・・16日が満月(旧暦12月16日 月齢14.7)でした。
寒月やこましゃっくれた貌で照る 青巒
「春日愚良子句集」から
寒極めすつとんきやうの声の欲し 愚良子
写真:寒月 と 小正月の道祖神「大文字」飾り 辰野町北大出にて
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