信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

高原リゾート×アウトドア用車椅子 vol.3

富士見高原リゾートでは、昨年6月、障害を持つ人やお年寄り、子ども連れやペット同伴でも楽しめるアウトドアのイベント「ユニバーサルフェス」が初開催されました。

自分が好きなことを、人がやってくれるのが楽しい

- 「ユニバーサルフェス」はどうでしたか?

中岡さん)
「HIPPO」や「JINRIKI」の試乗や、パラグライダー、ツリーイング(木登り)などを行いました。私もいろいろと挑戦しましたが、木に登ると普段と違う目線になって、見える世界が違ったり、風やにおいを感じたり、素敵な体験でした。

2015年6月に開催されたユニバーサルフェス

HIPPOを使ったパラグライダー

- 車椅子でパラグライダーや木登りができるんですね。

藤田さん)
「HIPPO」は軽いのでできるんですが、パラグライダーも木登りも、許可してくれる場所がなかなかないんです。でも、体験することで車椅子の人が「やりたいと思えること」がどんどん広がるじゃないですか。

- これができるなら、あれもできるかも、こんなこともやりたい!って思いますよね。

藤田さん)
普通、週末に遊びたいから頑張って働くとか、こういうことをやりたいから勉強しようとか思うじゃないですか。同じように、車椅子の子どもたちも思えるようになればいいですよね。今は、障害者雇用とか就労支援とか言ってますが、頑張って働いても遊ぶところがないんですよね。

HIPPOを使ってのツリーイング(木登り)

- 確かに…そういうことまではあまり考えていない気がします。

藤田さん)
ここから広がって、新しいものが生まれたら面白いと思うんです。役立つアイテムや考え方をどんどん試して磨き上げていけるような環境があれば、そこをきっかけにして、観光だけではなく産業になっていくものが生まれるかもしれない。その可能性は充分秘めていると思います。

中岡さん)
この場所も、「HIPPO」単体で何をするかではなくて、どう展開していくかという視点があったから、6年という短い期間でここまで取り組みが広がったんだと思います。

藤田さん)
これまでも、自転車の大会やトレイルラン、ドラマの撮影などの要望を聞いて、それをどうしたら実現できるかを考えて、対応をしてきました。それは、「ユニバーサルツーリズム」の考え方と私にとっては同じなんです。やりたいことを持っている人に対して、何ができるのか。どうしたら楽しんでもらえて、そして、地域にお金が落ちるのか。

- 藤田さんの考え方と中岡さんの考え方が、いい形でつながったんですね。

中岡さん)
私たちも藤田さんと出会うまでは、「こういう考え、環境を広めたい!」という思いばかりで、フィールドという点は大きく欠けていました。それが、富士見高原リゾートというフィールドを得て、少しずつ実現に向けて動くことができるようになりました。

藤田さん)
私たちにとっても中岡さんたちと一緒に取り組めたのは、運が良かったです。施設サイドと利用者サイド、両者の視線で考えることができた。うまくバランスが取れているから、こうして続いてきたのだと思います。

- 今後はどんなことを?

中岡さん)
私たちは「選択肢」という言葉を大事にしています。皆がする必要はないけど、やりたいと思った人ができる環境をつくっていきたい。バリアフリーがあるに越したことはないですが、物質的な面だけで解決しようと思っても限界があります。

藤田さん)
都会的なバリアフリーと、ここのように自然豊かな地域が目指すバリアフリーは一緒じゃなくていい。そう言ってもいいんじゃないかな。会社としては、よりさまざまなサービスを誰でも誰とでも楽しめるように変えていくことが一つのテーマだと考えています。個人的な思いとしては、こういう考え方が県内、そして国内各地にもっと広がっていけばいいなと。

中岡さん)
ゆくゆくは、「ユニバーサル」と言わなくても、皆で楽しめるのが当たり前で、誰でもウェルカムな状況になるといいですよね。

藤田さん)
先日、私もインストラクターと一緒にフランスへ行ったんですが、トロワバヴァレー・ヴァルトランスでは、リフト乗り場やゴンドラ乗り場には必ず車椅子専用の入口があります。高齢者も、スキーが滑れないという人でも、頂上まで行って、降りてこられるんです。雪を楽しめるアクティビティもたくさんあります。でも、15年前はそうではなかった。国家規模で時間をかけて、少しずつ環境を整えていったそうです。

デュアルスキーはそのままリフトへの乗降が可能

- 時間はかかるかもしれないけど、少しずつ広がっていけばいいですね。

藤田さん)
今は、お客さんに「次は私、どこに行ったら楽しめますか?」って聞かれても、答えに困っちゃうんです。フランス、とも言えないし(苦笑)。「じゃあ、ここに行ったらいいよ」とお勧めできる場所がどんどん増えればいいなと思います。


2010年に始まった富士見高原リゾートの「ユニバーサルフィールド」化。徐々に情報が広まり、年を追うごとに多くの利用者が訪れるようになりました。「皆さん、周りのスタッフに『ありがとう、ありがとう』って言って帰っていかれるんです。それを嬉しく思わない社員はいませんよね」と藤田さん。実際に利用する皆さんの様子を見れば見るほど、必要性を感じる社員も増え、それは考え方やサービスの在り方にも変化を与えました。どんな人に対しても「来てください」と言えること。それは、設備だけではなく人による部分も大きいことを、溢れる笑顔が教えてくれるような気がしました。

PROFILE
1975年、横浜市生まれ。10年ほど山小屋で働き、2006年、富士見高原リゾートに入社。スキー場、ホテルなどの部署を経て、それまでの知識や経験を活かしてイベント企画やロケ誘致に携わるようになる。2010年ごろから「ユニバーサルフィールド」を目指した取り組みに着手。「首都圏から見れば、富士見高原は長野県の“入口”。ここで楽しんでもらったら、次は上高地や白馬、志賀高原などもっと奥に行ってもらえるようになれば」

LINEで送る

このブログのトップへ