「旬」の宅配便~佐久っと通信~ いつでも新鮮! 職員が見つけた佐久地域の「旬」の魅力をお届けします。 どうぞ、さくっと見てください。

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“忘己利他”の精神に学ぶ

こんにちは、農地整備課のKJです。

9月に開催された、浅科小学校4年生による五郎兵衛用水見学に講師として参加させていただきました。ここ3年ほど参加させていただいておりますが、児童たちが真剣に学ぶ姿がとても印象的で毎年感心させられます。

出発式

見学会の様子をお伝えする前に「五郎兵衛用水」をご紹介します。
五郎兵衛用水は佐久市(旧五郎兵衛新田村)を流れる水路で、群馬県出身の「市川五郎兵衛真親」が1630年ころに開削した延長20㎞にわたる用水路です。用水の特徴や長い間保全管理されてきた歴史が認められ、2018年には世界かんがい施設遺産に登録されました。地元の人は親しみを込めて「五郎兵衛さん」と呼んでいます。

 

まずは、五郎兵衛用水の水源である「五斗水」を見学します。
五郎兵衛用水の出発地点でもあり、五郎兵衛さんが50歳を過ぎてから3年の歳月をかけて見つけた場所です。どうして水が湧き出るのか。その秘密は周囲の水源林にあるということを私から説明させていただきました。
水源涵養に加え、生態系の保全や災害防止など、生き物が暮らすうえでとても大切な存在なのです。この恵みに感謝し、自然を大切にしていかなくてはならないと考えるきっかけになってくれたらうれしいです。

 

次に訪れたのは、「取入口」になります。
五斗水で湧き出た水は「細小路川」を流れ、細小路川は「鹿曲川」に合流します。五郎兵衛用水はこの鹿曲川から取水しており、五郎兵衛さんの次なる偉業もここから始まります。
現在は「頭首工」と呼ばれる取水施設がありますが、五郎兵衛さんも同じ場所から取水し、「掘貫(トンネル)」や「掛樋(橋)」といった現在にも通ずる土木技術を用いて、当時、不毛の地であった矢島原へ水を引き、五郎兵衛新田を開拓したのです。

トンネルをくぐる

 

午後は「五郎兵衛用水発電所」に伺い、農業だけではなく発電にも使われている五郎兵衛用水について学びました。
令和5年度から供用開始したまだ新しい小水力発電所です。水の力で発電する仕組みや維持管理が容易になる工夫について、難しい話も多かったようですが一生懸命メモをとっていました。

 

用水の上流から施設を見てきたわけですが、「五郎兵衛用水記念館」を訪れて、新たに姿を変えた五郎兵衛用水について勉強します。
五郎兵衛用水の大半は、我々の大先輩が実施した昭和の大改修で近代的な構造に造り変わっています。この改修事業で造られた「サイフォン」という構造物について説明させていただきました。
条件がそろえば動力無くして水が山を昇る仕組みですが、児童の手をお借りして模型で実演して見せます。
毎年説明してきたわけですが、本当に水が昇っていくの見て今年も驚きの声があがります。(驚いてくれてほっとしています)

 

最後は浅科小学校の目の前にある「築堰(つきせぎ)」と呼ばれる五郎兵衛用水が流れる水路を見学して解散です。一日本当にお疲れ様でした。

 

ブログタイトルにもある“忘己利他”という言葉ですが、仏教の基本精神を表す言葉であり、「己を忘れて、他の人々に尽くす」という意味合いがあります。市川一族は元々武家でしたが、徳川家康の士官を断り、代わりに土地の開発を認めるという朱印状を与えられます。五郎兵衛さんは私財を投げ打って新田を開発したわけですが、決してこれらを己のものとせず、広く民に分け与えました。民を想う心を貫いたその精神に、いまを生きる我々も学ぶことがあるはずです。

 

私事ですが、市川五郎兵衛真親の偉業を浅科小の児童たちに説明するのはおそらく最後になります。今年も教育活動の一助になれたらと思い参加させていただきました。
今年は歴史ある用水を学び、来年はこの用水で稲作を体験するとのことです。知ること、触れること、育てること、すべてが子どもたちにとってかけがえのない学びと経験になることを願っております。

 

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