2012.09.11 [ 信州大自然紀行環境保全研究所飯綱庁舎 ]
天狗の麦飯(謎という宝もの)
今年5月の田植えの頃に写真とともにご紹介した飯綱山の里が、稔りの季節を迎えました。下の写真は、朝日をうけた稲田の様子です。朝夕がすっかり涼しくなり、信州はこれから日一日と秋が深まっていきます。
ところでこの黄金色の田んぼの向こうにある飯綱山には天狗伝説があります。その天狗様は、かつて信濃の大天狗「飯縄三郎(いづなさぶろう)」として、その名を全国にとどろかせていたそうです。しかも、この山の頂近くには不思議な食べられる砂(飯砂:いいずな)があり、飢饉のときなどには、人々に天狗様がその砂を分け与えたという話もあります。その砂は別名「天狗の麦飯」と呼ばれるものです。面白いことに、江戸後期の有名な俳人小林一茶も、ふるさとの山へのあいさつとして
~ 涼しさや飯を掘り出す飯縄山 ~ 一茶
という句をつくっています。ただしかつて飯綱山にあったとされる天狗の麦飯は、多くの人に知られる一方で荒らされてしまったのか、残念ながら今では絶滅してしまったようです。
この天狗の麦飯なる物体(生物)は想像上のものではなく実在し、広辞苑にもその説明が掲載されています。しかし、その生物分類学的な位置づけや生態はよくわかっていません。
ところは変わりますが浅間山麓の小諸市郊外には、その名もずばり「天狗の麦飯産地」があり、そこは国の天然記念物に指定されています(下の写真参照)。
信州の火山地帯にゆかりの深い天狗の麦飯は、よくわからないということがさらに好奇心をそそります。しかし、伝説とともに、謎はそのまま謎として、そっとしておくほうがよいこともある、という気もします。(天然記念物は掘ったりしてはいけません、天狗様からのばちがあたります。念のため。)
~ 平らかに秋おりてくる 田んぼかな ~
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