2011.06.17 [ 信州大自然紀行環境保全研究所飯綱庁舎 ]
駒ヶ根の切石(海なき信州の津波)
駒ヶ根市西の「菅の台」は、中央アルプス駒ヶ岳への玄関口です。バスセンター脇の切石公園に、その名も「切石(きりいし)」という巨石があります。
長辺が10mを超える石で、まるで包丁で切ったかのようにきれいに割れています。割れ口も見事ですが、そもそもこんな巨大な石がどうしてここにあるのかが気になります。じつは周辺の半径600m以内には名のある巨石が7つもあり「七名石(ななめいせき)」と呼ばれています。
巨石のほとんどは7000万年前頃に形成された木曽駒花崗岩で、中央アルプスの中心部に露出する岩石です。これら巨石の中には、数万年前に駒ヶ岳や空木岳などの稜線付近に成長した氷河によって斜面途中まで運ばれてきたものがあるかもしれません。そして、それらを現在の地まで運んで来たのは、近くを流れる太田切川です。普段の太田切川はこんな巨石を動かすことはできませんが、大雨や強い地震があった場合には、崩れた土砂がいったん上流の川を堰き止め、大量の水と土石が一緒になって力を蓄え、一気に山からふもとへ押し出して来ることがあります。「土石流」というもので、昔から「山津波」として恐れられてきた自然現象です。そのような山津波が過去に繰り返しやってきたことによって、高原の扇状地が生まれました。のどかな高原にそういう過去があったことを切石は教えてくれます。時間に余裕があれば、バスセンター周辺をちょっと散策してみてはいかがでしょうか。
千年・万年単位の歴史の上では、山津波は決して珍しい現象ではありません。美しい自然と恐ろしい自然は表裏一体の関係にあります。海なき信州でも、津波への備えは大切です。
~岩まどろむ 昨日の氷河夢にみて~
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