2011.07.14 [ 信州大自然紀行環境保全研究所飯綱庁舎 ]
横川の蛇石(蛇の石、龍の滝)
長野県の中央部、辰野町の横川渓谷の紹介です。
横川渓谷の中流部には、国の天然記念物になっている「蛇石(じゃいし)」があります。中生代ジュラ紀の泥質岩に薄く岩床(がんしょう)として入り込んだ閃緑岩(せんりょくがん)のマグマが、冷えてかたまったものです。閃緑岩には数十センチ間隔で白い石英脈が何本も規則的に入り、まるで蛇の身体のように見えます。実際に目にすれば、「閃緑岩の岩床」という言葉は忘れても、「蛇石」という名を忘れることはないでしょう。周囲をよく見れば、蛇が親子であるのがわかります。
蛇石の脇はキャンプ場になっていて、河床に降りて蛇石を間近に見たり、清流に足を浸して遊ぶことができます。
また、キャンプ場から上流の林道にはゲートがあり、そこから歩いて約90分。黒沢谷の奥には龍神を祀る「三級の滝」があります。ただし、残念ながら黒沢谷沿いの山道は過去の台風被害の影響もあって荒れていて、今は一般の通行が困難です。全落差が50mくらいもある見事な三段の滝で、チャートという堅い岩石が滝をつくっています。チャートは微細な石英の集まりで、放散虫という海洋性のプランクトンの骨格がもとになっています。2億年くらい前の遠洋の深海底に、静かに降り積もった微細な化石の集まりが、やがて堅い岩となり、水流の浸食に抵抗して滝をつくったわけです。河床は激しい水流に磨かれて容易に近づけませんが、遠目にも灰色のチャートの美しい縞模様を見ることができるでしょう(下の写真をご覧あれ)。
川の名前は岩石の色や種類を表すことが少なくありません。花崗岩地域には白沢や白川が、堆積岩地域には黒沢や黒川という名の川が多くあります。横川渓谷は黒く美しい谷で、龍や蛇の精がよく似合います。
~ 滝の音 はらにおさめて 帰りけり ~
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