2014.04.11 [ 信州大自然紀行環境保全研究所飯綱庁舎 ]
岩鼻~岩壁と伝説の地~
上田市を流れる千曲川沿いに、半過岩鼻(はんがのいわばな)と呼ばれる場所があります。
市街地からよく見え、半洞窟状の窪みがあって、遠望すると本当に何かの鼻のように見える岩壁です。
近づいてみると、崖下を千曲川の水流に洗われた高さ100メートル程もある大岩壁であることがわかります。崖をつくっているのは石英斑岩(もしくはひん岩)と呼ばれる火成岩です。今から1千万年以上も前、生まれたての日本海の底に堆積した泥岩層(別所層)に、地下から熱いマグマ(火成岩)が押し入ってきたものです。周囲の堆積岩に比べるととても硬いので、千曲川の侵食に抵抗し見事な岩壁を形成しています。また、そのすぐ下流の対岸には、同じく硬い緑色凝灰岩からなる塩尻の岩鼻と呼ばれる岩壁があります。千曲川は、善光寺平に出るまえにこれらふたつの岩鼻にはさまれた狭窄部を通過することになります。この狭窄部にまつわる伝説が「唐猫と神鼠」のお話です。
むかしむかし、上田盆地が湖だった頃、近くに神鼠という大鼠がおり、人々を大層苦しめていたそうです。そこで、村人が大きくて立派な唐猫を連れてきて、鼠退治をしたのだそうです。猫に追い詰められた鼠は、苦し紛れに岩山を噛み切って湖を決壊させ、濁流とともに流されていったとのことです。岩鼻の下流には鼠という地名があり、またさらにその下流には軻良根古(からねこ)神社という社もあるとのこと。伝説とはいえ、なかなか奥が深そうです。
半過の岩鼻の頂上は意外に平坦で、そこに千曲川公園があります。公園の端まで行くと、千曲川の上下流の雄大な景色を一望できます。また最近、岩鼻の下に、上田道と川の駅「おとぎの里」という体験交流施設が出来ました。岩の違いが崖をつくり、川と崖の組み合わせがその土地ならでは伝説のもとになりました。信州には、そういう例が少なくありません。鼠と猫にゆかりのある里は、これから花の季節になります。犬のように散策をしてみてはいかがでしょうか。
~ ポチのごと 鼻をたよりに春夕べ ~ 句集「風に鹿」所収
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