2022.03.02 [ 計量検定所 ]
計量女子の計量検定所日記「落語から探る江戸時代の時間の数え方」
こんにちは!計量女子です。
最近は時節柄あまり出歩かない計量女子ですが(計量中学生が受験生なので)、そんな巣ごもり生活を支えてくれる大好きなテレビ番組があります。
日本テレビ系で、毎週日曜日の夕方5時30分から放映されている演芸バラエティ番組「笑点」。
番組前半の演芸コーナーも好きですが、落語家の師匠方が座布団をやりとりする「大喜利」を見るのが、生きがいと言い切っていいほど大好きです。
笑点については記事を数本書けるほど語りたいことがありますが、このブログは計量検定所日記。
林家たい平師匠の「何かあったのか劇場」や三遊亭小遊三師匠が座薬と火薬を間違えるネタではなく、「はかる」について話さなければいけません。
そこで、古典落語の中から「時そば」という噺を紹介しつつ、江戸時代の時間の単位について調べてみたいと思います。
「時そば」のあらすじは、以下のとおりです。
流しのそば屋でそばを頼んだ男が、店の名前に始まり、そばの出来る速さ、箸、丼、つゆやそばの味を褒めたたえ、最後に代金を払う時
男「一、二、三、四、五、六、七、八…今何時(なんどき)だい?」
そば屋「九つです」
男「十、十一、十二、十三、十四、十五、十六」
と、代金十六文のうち一文をごまかす。
それを見ていた別の男、自分も全く同じことをしてそばの代金をごまかそうとするが、褒めるのがうまくいかない上に
別の男「一、二、三、四、五、六、七、八…今何時(なんどき)だい?」
そば屋「四つです」
別の男「五、六、七、八、九、十、十一、十二、十三、十四、十五、十六」
と、逆に代金を四文多く払う羽目になる。
この噺の肝は、「そばをすする様子があたかも本物を食べているように見えるところ」だと言われますが、このブログ的には「江戸時代の時刻の数え方」に注目してみます。
江戸時代の時間の基準は、日の出と日没でした。
日の出を「明け六つ」と呼び、そこから五つ→四つ→九つ→八つ→七つと数えて日没は「暮れ六つ」、そこから五つ→四つ→九つ→八つ→七つ→六つ(明け六つ)と、日の出と日没の間を6等分して数えました。
そして、複数の寺が時を知らせる鐘を鳴らすことで、江戸の庶民は手元に時計がなくてもおおよその時間を知ることができたのです。
(日の出と日没が基準となるため、季節によって6等分した長さは変わります。これを「不定時法(ふていじほう)」と呼びます。)
最初の男は「九つ(現在の23時~深夜1時)」にそばを注文したのに、別の男は少し早い「四つ(現在の21時~23時)」に注文してしまった。そして最初の男と同じ数え方をしたために余計な代金を払う羽目になった…というのが、時そばを面白くしている部分です。
余談ですが、国際単位系(SI)で定義される時間の単位は「s(秒)」。
そして、1 s(1秒)の長さは
「セシウム百三十三の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の九十一億九千二百六十三万千七百七十倍に等しい時間」
とされています。
※計量単位令(平成四年政令第三百五十七号)別表第一(第二条関係)より抜粋
なんだか落語の「寿限無」に出てくる子どもの名前みたいな長さだな…と思った計量女子でした。
このブログへの取材依頼や情報提供、ご意見・ご要望はこちら
松本地域振興局 総務管理課
TEL:0263-40-1955
FAX:0263-47-7821