周囲を2000メートル級の連峰に囲まれた渓谷に、14の集落が点在する奈川地区。街道沿いの交通の要所として発展し、近世は工女たちが野麦峠を超えてやってくるなど、様々な歴史が行き交いました。そんな奈川地区にIターンし、2009年から温泉宿「山荘わたり」を営みながら、奈川のすばらしさを全国に広めるべく様々な活動をなさっている亘亘(わたり わたる)さんにお話を伺いました。(ちなみに、ご本名です。)
(亘さんと、亘さんのこだわりが詰まった「干しそば 奈川」)
-亘さんは東京のご出身と伺っていますが、移住先を奈川に決めたのはなぜですか
小さいころから父と一緒に長野県に山に釣りにと来ていたので、長野県に馴染みもありました。移住を考え始めた当時は、まだU・Iターンの取組も始まったばかりで、移住先を紹介してくれるところも少なく、結局自分で探しました。家族もいたので、年間通して正社員などで仕事がありかつ自然豊かな田舎を探したところ、行きついたのが奈川でした。街道筋で、野麦街道も、木曽へ行く県道もあるほか、あまり閉鎖的でない雰囲気でしたし、上高地や乗鞍、松本といった自分に馴染みのある地域も近いのでここにしました。
-この建物もとても素敵ですね
移住後、他の公共の宿泊施設の施設長をしていましたが、10年前に松本市の宿泊施設だったこの建物が閉鎖することになり、ちょうど私が奈川の特産品の商品化のために法人を立ち上げたところでしたので、2009年に施設を借りて独立し、宿泊業と、奈川産商品の販売を始めました。
(温泉宿「山荘わたり」)
-商品開発を始めたきっかけは何でしょう
観光協会という立場で各地へ宣伝に行くなかで、特産品を説明するには言葉で説明するだけでなく、「見せられ」「食べてもらえて」「手に取ってもらえる」ものの方がパンフレットよりも印象に残って良いな、と思ったことです。当時の観光協会長も、そばを特産品にと考えていたこともあります。
松本商工会議所さんのお力も借りて、試行錯誤の結果、出来上がったのがこの「干しそば 奈川」です。
-そばは乾麺なのですね
日持ちするので、より遠くの方々に日にちを選ばずにお届けできます。生麺だと食べる日など、お客様の御都合に合わせて発送しなければなりませんが、乾麺ならその必要はありません。私はパッケージデザインや販売方法の戦略といったプロデュースを担当しました。
-黒の包装は高級感があります
当時は食品の包装に「黒」は少なくあまり見かけませんでした。今では高級品は黒い包装も多く、店舗も黒を効かせて高級なイメージを作るようになりましたが、その頃は食品に黒はあまり好んで使われていなかったと記憶しています。私は高級感を出すなら「黒のつや消し」と思っていましたので、「奈川」の文字は白にして、この包装が完成しました。
-奈川そばのブランド化に取り組んだということですね
数を売ることは考えていません。売れるにこしたことはありませんが・・
特産品の素材は高価なものも多いうえ、それを使った商品となると、大量には生産できずさらにコストもかかります。販売方法も、地元の物産所で直販するならまだしも、卸販売では中間業者の利益も加わりさらに高額になってしまいますので。
でも、「商品の価値は絶対に下げたくない」という強い思いで、値段での妥協はしませんでした。多分グラム当たりでは当時日本一高い乾麺だったのでは、と思っています。
このブログへの取材依頼や情報提供、ご意見・ご要望はこちら
松本地域振興局 総務管理課
TEL:0263-40-1955
FAX:0263-47-7821