2014.10.11 [ 自然・山・花 ]
物思う秋の日に【井月さんのこころ81】
井月さんのこころ シリーズ その81
日本ジオパーク南アルプス大会の開催にあわせて中央構造線の「溝口北露頭」が整備され公開されたと聞いて、見学に出かけました。
場所は、伊那市立長谷中学校のすぐ北側。美和ダムでできたコバルトブルーに乳白色を加えた神秘的な長谷湖の右岸に突き出した半島の北向き斜面にあります。
「ジオパークを観る・学ぶ楽しみ、地域発でジオを子供たちに広げる取組み」で地方自治の未来を拓くことができそうな可能性を感じた今回の全国大会でしたが、やはり現物を観ると説得力があります。日本列島の成立ちが観察できる新たに整備されたジオスポットです。
写真:溝口北露頭(手前)から非持露頭、美和ダムサイトを望む(北向き)
中央構造線や露頭の解説について、伊那市HPから引用させていただきます。(観光情報 ジオパーク ジオサイト(その1) 市内の地質遺産 から)https://www.inacity.jp/kankojoho/shizen_koen/jiopark/jiosite_shinai.html
中央構造線は関東から九州まで続く大断層です。この断層には、領家変成帯(日本海側・西側)の岩石と三波川変成帯(太平洋側・東側)の岩石が接しています。
約2億年前のジュラ紀に、古アジア大陸のプレートの下に海洋プレートが沈み込むことにより、海洋プレートの上に積み重なった堆積物や地殻の一部が剥ぎ取られ、大陸側プレートに付け加わった岩石(付加体)が、中央構造線で接するそれぞれの岩石のもとになっています。
約1億年前の白亜紀には、さらに続くプレートの沈み込みにともない、付加体の内陸側ではマグマの上昇の影響で低圧高温による岩石の変成作用が起こりました。一方、同じ付加体の海溝側では、海洋プレートの沈み込みの影響で高圧低温による岩石の変成作用が起こりました。領家変成帯は低圧高温により、三波川変成帯は高圧低温によりできた岩石からなります。
その後、この二つの変成帯の間で横ずれの断層運動が起こりました。断層運動による移動距離は200km以上と言われ、最大2,000kmとも推定されています。この大規模な断層運動により二つの変成帯の間にあった中間地帯は失われ、現在は、中央構造線を境界として、二つの変成帯が接しています。
写真:溝口北露頭を美和ダム湖岸から見上げる(南向き)
この露頭では、領家変成帯(向かって右側:西)の砂泥質片麻岩と、三波川変成帯(向かって左側:東)の黒色片岩(泥質片岩)の間に、地質境界の中央構造線が観察できます。
伊那合同庁舎に隣接する伊那市創造館の庭には「創造館ロックガーデン」があり、ジオサイトの代表的な岩石標本が置かれています。
西から領家変成帯、中央構造線、三波川変成帯、戸台構造線、秩父帯、仏像構造線、四万十帯の順に並んでいる様子が模式的に示されています。
マグマが固まった玄武岩等の上に海洋生物の死骸等によってできた石灰岩やチャートを載せた海洋プレートが南から移動してきて日本海溝で大陸プレートの下に大きく沈み込み、大陸から運ばれた砂岩・泥岩層を載せ、更に大陸側の地殻を剝ぎ取った付加帯を順次載せて地層がせり上り、そこへ古伊豆諸島が北西方向へぶつかってきて、東側から逆「く」の字型に折り曲げられ捲くれ上がって南アルプスが形成されたということで、地層が逆転していることや毎年4mmずつせりあがり続けていることが説明できるということなのです。
今年6月28日に長衛祭(遡回その68)で北沢峠へ登ったときに南アルプススーパー林道を登っていく途中でバスの車窓から「幕岩」や「仏像構造線・唐沢露頭」などを観ることができました。
2014年7月5日 清水掬うように【井月さんのこころ68】
https://blog.nagano-ken.jp/kamiina/nature/2547.html
「幕岩」は、関東から沖縄本島へ続く秩父帯のうち、富士見町釜無から大鹿村豊口へ続く帯状の石灰岩体が戸台川に削られ、岩壁となって露出したものです
「仏像構造線」は、約2億年前に海洋プレートの沈み込み帯にできた秩父帯と、約1億年前の沈み込み帯にできた四万十帯北帯の境界になっている大断層で、中央構造線とほぼ平行して房総半島および関東山地南部から沖縄本島まで続いています。唐沢露頭では秩父帯の石灰岩と四万十帯の砂岩が接しています。
悠久の大地の歴史に学ぶとともに、太陽と地球と月との関係や、更には宇宙の成立ちに畏怖の心を持ち続けなければならないことを改めて思い知らされた日本ジオパーク南アルプス大会でした。
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