い~な 上伊那 2つのアルプスと天竜川からなる伊那谷の北部に位置し、雄大な自然に囲まれた上伊那地域。 この地域の自然、食、歴史や地域のがんばる人々など、私たち職員が見つけ、感じた上伊那の魅力と地域の活力を発信します。

い~な 上伊那

2つのアルプスと天竜川からなる伊那谷の北部に位置し、雄大な自然に囲まれた上伊那地域。 この地域の自然、食、歴史や地域のがんばる人々など、私たち職員が見つけ、感じた上伊那の魅力と地域の活力を発信します。

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春霞の余白に 【井月さんのこころ160】

 自分を育ててくれた地域への恩返しの想いの総和がこれからの地方創生の推進力になるのだと信じています。子供たちに郷土愛を育み、豊かな自然と美しい風土のなかで、末永く伊那谷地域が発展するようにと願いながら、あとを託して去ります。

DSC_3293 春霞の「余白」が伊那谷の空いっぱいに広がっています。

 「春日愚良子句集」から
    魂は例へば余白霞みけり  愚良子

 あと少しだけ……心残りが…
 任期満了の万感の「余白」に、治水利水ダム等検討委員会駒沢川部会の公聴会(平成15年3月)において時間の制約で最後まで申し述べることが出来ず、心残りであったであろう父の遺稿を掲載させていただきます。

   供 亮善院栄興泰運居士  青巒朴翆 拝。

 平成15年3月2日 於:辰野町小野農民研修センター
 長野県治水利水ダム等検討委員会駒沢川部会公聴会

 この小野の地で60年余、米を作り、山を育ててきた経験を基に意見と要望を申し上げます。
 先ず水不足が深刻な地域であることをわかっていただきたいと思います。
 小野盆地は周囲を比較的低い峠に囲まれ古くから交通の要衝として栄え、信濃ノ国二之宮である矢彦・小野両神社が祀られ、江戸時代は天領でありました。
 周囲を分水嶺に囲まれた小さな盆地でありますので山は浅く、他所から流れてくる水はありません。狭い盆地に降る雨が全てであり、渇水に悩まされ続けてきた歴史があります。
DSC_3150  戦時中食糧増産のために農家へ出役を割り当て人力によって細洞溜池を造り大切に使ってきました。一番水が必要な代掻き期に駒沢山の雪解け水を貯めて温めておいた細洞の水を上から順番に栓を抜き、駒沢川の水だけでは足りない分を補給して、まず荒代を掻きます。
 本代や田植えにも使うので細洞を使い切るわけにはいきません。必要最小限の栓を抜きます。
 一枚の田を水口から順に掻きますが、水が充分にありませんから下畦まで水が回って掻き終えるのに一日では済まないこともある根気のいる仕事です。
 次に水が要るのは梅雨が終わる頃、稲の幼穂形成期です。7月の10日から20日頃でありますが、標高850メートル高冷地ですから幼穂を護るために深水管理が欠かせません。
 続いて減数分裂期、出穂期を経て、お盆頃には穂が出揃います。
 米作りには、この幼穂形成期から出穂5日後くらいまでが最も水が必要な時期であります。更に登熟期にも一定量の水は必要になります。
 カラ梅雨で水が足りずに十分に実が入らなかった年が何回もありました。
 現在では稲の品種改良もされ米作りの技術も向上しましたし、何と言っても米余りによる減反率の目標が4割などという時代になってしまいました。
 毎年のように繰り返されてきた水争いもひと頃に比べれば少なくなりましたが、食糧が不足する時代は遠からずきっと来ます。
 いつまでも低い自給率のままで日本という国が続いていけるとは思えません。
 その時に現在水道水源にも回している駒沢川の水が足りなくなる事は必至であり、水の確保はまさにこの地域の生命線であります。
 私は長年に亘り小野山林組合の仕事にも携わってきました。山は育てれば育てるほど土砂を止め水を貯えます。しかし、旱魃の年には山が水を吸ってしまい、渇水を深刻にすることも事実なのであります。
 駒沢山からの湧水も細くなりますから普段飲んでいる「穴場」の口元の水源から旱魃の時には一日に何百トンもの湧水が取水できるはずがありません。どこかに貯水池を造り貯める以外に方法はないと思います。一番の適地は駒沢ダムの計画地だと思います。
 ダム計画にも若干の疑問を感じていることも事実です。
 治水と利水を兼ねているからそれなりの大きさが必要だろうと思いますが、細洞の15倍というのは、あまりにも大きいのではないかと感じます。
 また、春宮の上の方へ井戸を掘ると云っても一日に四百トンもの地下水が汲み上げ続けられるものか、鉄分だらけで使えないのではないかと心配になります。あそこも山が浅く地下水の量は当てにはならないと思います。
 子々孫々に亘って水に苦労しなくて済むように、もっと現実的で身の丈に合った方法を考えられないものでしょうか。
DSC_3144  そこで、提案であります。
 実際の川の流量を観測しているようでありますから、それを基にして一年の内で貯めることができる時期と空けておくべき時期をもう一度調べ直してみてほしいと思います。
 春の田植の時期までに洪水が起きたためしはありません。それまでは目一杯貯めておいても良いはずです。その水で代掻きと田植えができます。
 幼穂形成期にはカラ梅雨ならば貯め、降水量が多い年には空けておけば良いのです。
 台風が来そうならば予め抜いておいて、降ったら貯める様にすれば良いはずです。
 細洞の僅かな水を出し入れしながら大切に管理をして最大限に有効に使ってきました。工夫をすれば何とかできるはずです。
 身の丈に合った大きさの貯水池を造ってほしいものであります。
 今計画されているダム地点がどうしてもダメだというのであれば、細洞の拡張だけでなく、細洞と大の洞との中間の窪地へ細洞から導水路を開けて新たに溜池を造ってください。
 治水と利水を両立する水の管理は地元が責任をもってやりますから。  以上。

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