2013.06.01 [ 食・農・旅 ]
お田植えの頃【井月さんのこころ12】
井月さんのこころ シリーズ その12
関東甲信地方の梅雨入りは平年だと6月8日頃です。
梅雨入りを前に、上伊那地方の田植えは、ほとんど終わりました。
(南アルプスを望む田植え:駒ヶ根市南割 5月17日撮影)
平年に比べ10日も早い梅雨入りが発表された5月29日(水)県議会農政林務委員会の現地調査が上伊那管内で行われました。
凍霜害の被害調査では、箕輪町のリンゴと中川村の赤ナシの被害状況を視察していただきました。
リンゴでは、矮化栽培で目通り以下の地面に近い枝の着果が悪いことによる収量減、錆びや変形による品質低下を心配されていました。
赤ナシでは、開花最盛期に凍霜害を受けた「南水」の着果が著しく悪く(ほとんど実が付いていない)、「幸水」や「あきづき」でも小玉果による収量減や錆び等による品質低下を心配されていました。
梅雨入りが早すぎて、今度は農作物の日照不足も心配です。
被害を受けられた農家の皆さんに改めてお見舞いを申し上げます。
さて、幕末から明治にかけて井月さんが伊那路を漂泊していた頃、お田植えは今頃から梅雨時にかけて行われていたようです。
育苗技術も機械力も無かった時代、それが当たり前のことだったのでしょう。
耕した脊戸田(せとだ)眺めつ菖蒲酒(しょうぶざけ) 井月
一気色(ひとけしき)有(ある)や早苗の取残し 井月
玉苗や乙女が脛(はぎ)の美しき 井月
以下、「耕した脊戸田眺めつ菖蒲酒」の句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、
菖蒲酒は、しょうぶの根を刻んで浸した酒で、旧暦五月五日端午の節句に飲んで邪気を払う。室町時代に中国から伝来した風習。田植え前の田の黒土の印象がさわやかな家裏の田圃を眺めては菖蒲酒を味わう。
田植えは、育苗の進歩で早くなったが、昔は梅雨時で、端午の節句より後に行なわれた。
(菖蒲酒・夏)
ちなみに、今年の旧暦五月五日(端午の節句)は6月13日(木)になります。
なお、菖蒲(しょうぶ)と菖蒲(あやめ)は、漢字は同じで、葉の形も似ていますが、全くの別物だそうです。前者はサトイモ科、後者はアヤメ科だそうです。
花菖蒲(はなしょうぶ)菖蒲(あやめ)杜若(かきつばた)はいずれもアヤメ科アヤメ属で、その区別は素人には分かりにくいものです。
いずれが菖蒲(あやめ)杜若(かきつばた)。
立てば芍薬(しゃくやく)座れば牡丹(ぼたん)歩く姿は百合(ゆり)の花。
いずれも美人の比喩に使われる花々。
そういえば、井月さんには、「おんなっけ」というか、色恋の匂いが全くありませんね。
(悟りの境地か?蛙が・・・長谷の常福禅寺にて5月21日)
ところで、梅雨空の下では二つのアルプスは見通せないことが多いのですが、遠くの山々の雪も深い谷にのみ消え残るようになって、里では菖蒲(あやめ)や杜若(かきつばた)の花が見頃を迎えています。
近年は、外国から輸入されたジャーマンアイリスも人気があります。
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